携帯電話の番号ポータビリティ(MNP)の開始から,早くも3週間以上が過ぎた。その間に,10月末時点の各社の番号ポータビリティによる転入出の数値が明らかになった。その結果は,番号ポータビリティの緒戦ではKDDIが優位に勝負を進めているというものである(関連記事)。

 ITproでは,読者のみなさんに「番号ポータビリティを利用するか」について,制度開始直後の10月27日からITproのWebサイトでアンケート調査を実施してきた。最初の週末を含んだ10月27日~31日の調査結果は「【緊急アンケート速報】16%が年内に番号ポータビリティを利用予定」に報告した。年内に回答者の約16%が番号ポータビリティを利用する予定があり,番号ポータビリティ利用後に契約する事業者(利用する予定のない人は現在の事業者)を答えてもらったところ,KDDI(au)が半数に迫る結果となった。

 その後も,ITproではアンケート調査を継続。前回の調査以降,2回の週末を含む11月1日~12日に494人から調査結果を得た。その結果を報告する。

意向は高まる傾向で,年内に22%が利用予定へ

 まず,番号ポータビリティを年内に利用して事業者を乗り換える予定があるかを尋ねた問では,前回を上回る利用意向の回答が得られた(図1)。10月の調査結果では,「年内に利用予定」(利用済みも含む)が15.6%だったのに対して,11月1日~12日分の集計では22.1%にまで数値がふくらんだ。母集団が同じではないので一概に評価はできないが,番号ポータビリティへの認知が進み,利用意向が高まってきた傾向にあると考えられる。



図1●利用意向は10月調査よりも増加し22%に
「年内に利用予定」(利用済みを含む)回答者は増加傾向にある。

 今回は,「番号ポータビリティを利用済み」の層についても集計したところ,回答者の8.7%がすでに利用したと回答した。ITpro読者で,かつ番号ポータビリティのアンケート調査に積極的に回答する人という母集団ではあれ,番号ポータビリティの開始から3週間あまりで1割近くの人が制度を利用して事業者を乗り換えたという結果には驚きを感じるほどである。

 番号ポータビリティを利用済みの回答者の自由記入欄には,「自分の“ID”を変えることなく自分にあった通信事業者を選択できるすばらしい制度だと思う」,「携帯のサイトから予約番号を取るのはとても簡単だった」という声があった。一方で,「もっと簡単な手続きで対応できるようにしてほしい」との回答もあり,ユーザーによって手続きに関する評価が分かれている側面もあるようだ。

乗り換え後の事業者はKDDIが圧勝

 現在利用している事業者と,番号ポータビリティ適用後に利用予定の事業者を尋ねた結果を図2に示した。番号ポータビリティを年内には使わないなどの回答者には,適用前後とも現在利用中の事業者を回答してもらった。10月調査も11月調査も大きな傾向は同じで,番号ポータビリティの適用後には半数近くの回答者がKDDI(au)を選択するとの結果である。



図2●番号ポータビリティ適用後は10月,11月ともにKDDI(au)がトップ
ソフトバンクモバイルは,前回の微増に対して今回の結果では減少に転じた。

 細かく見ていくと,10月調査と11月調査で傾向に若干の変化が出てきている。一つは,KDDI(au)とNTTドコモの差が縮まっていること。この回答も母集団が異なるために,一概に一般的な傾向とまでは言えないが,番号ポータビリティ騒動が一段落してきた11月上旬の段階では,ユーザーの意識の中にややNTTドコモへの揺り戻しが起こっていると考えられる。

 もう一つの傾向は,ソフトバンクモバイルの適用前後のシェア変動が,11月調査では減少に転じた点。10月調査では1.1ポイントの微増だったソフトバンクモバイルの数値が,11月調査では3.4ポイント減少した。新プラン発表からそれに続く一連の軌道修正などで,ユーザーからの評価を落としている傾向が見て取れる。自由記入欄には,「ソフトバンクモバイル社内では混乱が続くのではないかと思う。いくら料金プランが魅力的でも,統率されていない会社の携帯を持ちたいとは思わない」,「今回の件でソフトバンクは信用ならないと思ったから番号ポータビリティを利用する」など,厳しい意見が散見された。

 番号ポータビリティ制度自体については,「いろいろな選択肢があることは良いことだと思う」といった総論賛成の意見が多かった。とはいえ,「メールアドレスが変更になるので意味がない」という声はかなりの数に上る。すでにメール端末としての意味を強く持っている携帯電話だけに,“電話番号”だけが引き継げる制度では乗り換えのきっかけには弱いとも言える。

 「今回の制度実施で,ユーザーをつなぎとめるためにサービスが向上して,より良いものになると思っていた。しかし現時点ではほとんど変化がなく,今後に期待したい」。この声に代弁されるように,ユーザーはより良いサービスや端末機能を低料金で利用できることを望んでいる。番号ポータビリティ制度が,いい意味での事業者間の競争につながるとことへのユーザーの期待は高い。