グループウエアの導入率は年々着実に高まっており,2006年調査では64%の導入率となっている。メーカーの勢力図も変化がみられる。数年前までグループウエアといえば日本IBMのLotus Notesを指していたほど,Lotus Notesのシェアは高かった。比較的規模の大きい部門内での情報の共有・活用を目的に,従業員規模の大きな企業を中心に導入されていた。

 それが,現在ではLotus Notesとサイボウズ製品のシェア争いが熾烈を極めている。この背景には,インターネットの急速な普及による企業内イントラネットの充実,回線速度の向上などによるネットワーク・インフラの整備がある。現在では中堅・中小企業でもグループウエアが普及する下地ができあがっている。そこに,小規模のワークグループ単位での情報共有などの動機付けがプラスされ,中堅・中小企業にサイボウズを中心とするグループウエアが導入され始めるようになっている。

 2006年のグループウエアのシェアは,全体ではLotus Notesがトップとなっている(図1)。しかし企業規模別でみると両者の違いが鮮明になる。

図1●グループウエアのシェア(Nは有効回答数)
図1●グループウエアのシェア(Nは有効回答数)

 年商50億円未満ではトップがサイボウズのサイボウズOfficeで23.6%,2位がLotus Notesで16.1%,3位がマイクロソフトのMicrosoft Exchangeで14.6%,4位がネオジャパンのdesknet'sで11.1%,5位が再びサイボウズのサイボウズガルーンで5.0%となっている。

 一方,年商50億円以上では,Lotus Notesが36.8%でトップ,2位がサイボウズOfficeで18.2%,3位がMicrosoft Exchangeで11.2%,4位がdesknet'sで6.2%,5位がNECのStar Officeで4.7%となっている(図2)。

図2●年商別のグループウエアのシェア(Nは有効回答数)
図2●年商別のグループウエアのシェア(Nは有効回答数)

 この結果を見ると,サイボウズ製品が企業規模の小さなゾーンを中心に足場を築いていることが分かる。年商50億円未満ではサイボウズ両製品のシェアを合計すると28.6%。Lotus Notesに10ポイント以上の差をつけている。確かにLotus Notesがいまだに国内で多くのユーザーを抱えていることに間違いはない。しかし,小規模のワークグループで簡単に導入するというよりも,エンタープライズ環境のグループウエアとしての印象がやはり強い。

満足度評価ではサイボウズ製品に軍配

 グループウエアの評価については,シェア上位5社の中で最も高い評価を得ているのが「サイボウズガルーン」の77.5(票数が少ないので参考値)だ。サイボウズOfficeで75.4,desknet'sの74.9,Lotus Notesの69.9,Microsoft Exchangeの63.0がこれに続く(図3)。

図3●グループウエアのシェアと評価(Nは有効回答数)
図3●グループウエアのシェアと評価(Nは有効回答数)

 評価については,Lotus Notesがカスタマイズを前提にした「ソリューション」なのに対して,サイボウズ製品は「パッケージ」としてそのまま利用することができることを前提にしている。費用対効果の面でも,初めから期待度が違う。Lotus Notesへの期待度が高いために,相対的にサイボウズ製品の評価は高めに出やすい傾向がある。サイボウズ製品の機能や効果は,ユーザーにとっては言わば「想定内」ということだ。

 「今後利用予定のグループウエア・パッケージ」のシェアでは,年商規模に関係なくサイボウズ製品がLotus Notesを大きく上回っている。これは「次にグループウエアを入れるなら(導入済なら同じメーカーでも良い),この製品を使ってみたい」という意識調査的な性格を帯びているので,厳密な予測になるとは言いがたい。だが,中堅・中小企業におけるサイボウズ製品への支持が確実に高まっていることは間違いない。導入企業数のシェアでは,サイボウズ製品がまもなくトップとなるだろう。

 エンタープライズ向けの性格を強く帯びたLotus Notesのシェアは,中堅・中小企業において漸減しつつある。だが,いわゆる「ソリューション」としての価値が評価されていることは周知の事実である。今後もその地位は揺らぎ無いだろう。

 逆に,サイボウズ製品が大企業のソリューションのニーズをどう満足させるべく展開していくのかに注目したい。中期的には,ユーザー企業による両者の使い分けが進み,最終的には「共棲」関係になることも予想される。ちなみにシェア3番手のMicrosoft Exchangeの動向については,別の機会に触れたい。少なくとも2強に食い込めない状況であることだけは確かだ。

 次回はセキュリティ・ソフトを取り上げる。

 なお回答企業プロフィールなどの調査概要については,こちらをご覧ください。

■伊嶋 謙二 (いしま けんじ)

【略歴】
ノークリサーチ代表。大手市場調査会社を経て98年に独立し,ノークリサーチを設立。IT市場に特化した調査,コンサルティングを展開。特に中堅・中小企業市場の分析を得意としている。