この10月はWebブラウザの話題で持ちきりだった。まず,米Microsoftが10月初旬,「Internet Explorer 7.0(IE 7)」の最終版(正式版)を10月中にリリースすることを表明。そして10月18日(米国時間),IE 7最終版が登場した(関連記事)。

 その2日前,米Mozilla Foundationは「Firefox 2」のRC(Release Candidate:製品候補版)3をリリース。それから1週間もたたない24日(米国時間),Firefox 2の最終版がリリースされた(関連記事)。

 IEにとっては2001年以来となる5年ぶりの大刷新。一方のFirefox 2は,2005年11月リリースの「1.5」からほぼ1年ぶりとなる。いずれもバージョン番号が1つ繰り上がるメジャー・アップグレード。絶妙なタイミングで2大ブラウザが刷新されたことで,大きな話題となった。国内外のメディアは連日のように両ブラウザの話題を伝えている。最も多いのはレビュー記事や比較レポートで,そうした記事の閲覧数はとても伸びているという。

 例えば米PC WORLD誌では,両ブラウザの新機能や特徴を細かく比較した「Review: Radically New IE7 or Updated Mozilla Firefox 2--Which Browser is Better?」という特集記事を公開。この記事が大変な人気を博しているという(掲載記事)。

IE 7とFirefox 2の特徴

 そうしたメディア記事を見ながら,両ブラウザの概要を簡単にまとめてみるとおおむね次のようになる。

 まずIE 7では新たにタブ・ブラウジング機能を設け,ようやくRSSにも対応した。また,フィッシング対策,印刷機能の向上も図った。タブ・ブラウジングでは,開いている複数ページをサムネイルで一覧表示する機能が好評とのことだ。印刷機能は,ページ全体を用紙に合わせてプリントできるようにした。画面表示では,テキストだけでなく,画像の拡大もスムーズに表示できるようになり,高く評価されているという。

 IE 7のユーザ・インタフェースは,メニュー・バーやツール・バー,ボタン類の配置を大きく変更しており,5年ぶりの大改革であることがよくわかる。しかし,5年という歳月の“ツケ”とでもいうべきか,ユーザー・インタフェースの大幅な変更により,これまでのIEユーザーを混乱させているという評価もある。

 一方Firefox 2は,基本的に前版「1.5」を継承し,各機能を洗練させたといえる。例えば,タブ・ブラウジングやRSS機能,検索バーといった既存機能を向上させるとともに,アドオン・モジュール(拡張機能)の細かい管理機能やスペルチェック,セッション復元機能などを追加した。また,Firefoxもフィッシング対策機能を備えて,これまで以上に安全に利用できるようになったとしている。

 Firefox 2では,一度閉じたタブを復元する機能を追加。また,検索バーにおいて,利用する検索エンジンを管理できる機能などが新たに登場。これらの機能は注目されているようだ。加えて今回の新版では,従来の拡張機能をふんだんにブラウザ本体に取り込んでいる(関連記事)。例えば「検索キーワードの候補を表示する」といった,従来は「Google Toolbar for Firefox」などのアドオンで実現していた機能を標準で備えた。

「どちらが優れているのか?」

 海外のメディア記事では,両ブラウザの機能や使い勝手を比較して,その優劣に言及しているものが少なくない。だが,それらの見解は記事によってまちまちで,読み比べても優劣をつけられないというのが正直なところである。例えば,CNET News.comではレビューを映像で配信しているが,その中では「Firefox 2はセキュリティ,機能などの点でIE 7より優れており勝者はFirefox」と結論づけている(掲載ページ)。

 一方,Windows IT ProのPaul Thurrott氏は,「Firefox 2は小さな改良を施しただけのバージョン」「そのフィッシング対策機能は三流品」などと手厳しい(掲載記事)。The Wall Street JournalコラムニストのWalter Mossberg氏の場合は,「IEは素晴らしい変貌を遂げた」としながらも「5年という年月をかけてようやくFirefoxに追いついただけ」とレポートをしている(掲載記事)。

 いろいろな記事を読んで,筆者はおおむね次のような結論に達した。今回IEは,その長年のブランクを埋めるべく,今の時代にふさわしい機能を一気に盛り込んだ。しかしその分,大幅な改良となりインタフェースの変更も伴うことになった。

 対してFirefox 2は,1.5版からそれほど目立った変更はない。これはユーザーを混乱させないという意図もあるとのことだが,そもそも前回のメジャー・アップグレードからまだ1年足らず。また,今回IE 7が新たに採り入れたもののほとんどはFirefoxで実装済みである。必然的に,IEのような“大改革”にはならなかった。

 結局,どちらがより素晴らしいかの判断はつかず,両者ほぼ互角といったところなのだろう。