レッツ・コーポレーションが9月15日,面白いネットワーク機器を発表した。FAXの誤送信を防ぐための装置「SeCURITY FAX 新Double Dial 64」,「同512」だ(関連記事)。

 Double Dialはまず,FAX機と電話回線の間に設置しておく。FAXで文書を送信したい人は送信直前にこのDouble Dialに対して相手先FAX番号を入力し,あらためてFAX機で送信操作を行う。もし,Double Dialで入力した番号とFAX機から発信しようとしている番号が一致しなければ,Double Dialが発信操作を中断する。送信者がダイヤル操作を2度行うことで,ダイヤルの押し間違いや短縮ダイヤルの選択ミスなどによる誤送信を水際で防ごうというわけである。

 通話の場合,電話番号を間違えたとしても相手が出たときに間違いということが分かる。これに対してFAXでは,間違った番号を押したとしても,相手側回線にFAX機が接続されていればそのまま文書が送信されてしまう。そこで,ダイヤルを2回まわすという手間を課すことによって,セキュリティを高めようというのがDouble Dialの発想である。文字通り“2度手間”となってしまい操作は煩雑になるが,金融機関などで実施されている「FAXを送信する際には必ず上司が立ち会って相手先を確認する」といった手法に比べれば,手間は軽減されていると言えよう。

 と,ここまでDouble Dialのことを考えていてハタと気付いたことがあった。それは電子メールもまた,同じような送信間違いを犯す危険があるのではないかと。それどころか,少なからぬ人が電子メールの誤送信を経験しているのではないかと。ここで白状すると,筆者にもその経験がある。ある人からメールをもらい,そのメール内容に不満を持った筆者は送信者に対する非難を書き加えたうえで上司に転送……しようとして,間違えてこともあろうにメールの送信者に返信してしまったのである。送信ボタンを押した直後,筆者はそのことに気付いたが後の祭り。いったん送信したメールは取り消すことができない。

 筆者が犯したミスは,かなり恥ずかしいものであるが,幸いにしてその後の業務に影響が出るほどのトラブルには発展しなかった。だが場合によっては,メールの誤送信によって取引に影響が出たり,情報の漏えいにつながることもあるだろう。そういう意味では,誤送信によるリスクはFAX送信と大差ない。FAXと同じように“2度ダイヤル”の手間をかけるようなソリューションが電子メールにあってもいいのではないか。

 例えば,こんな仕組みはどうだろうか。電子メール・ソフトの送信ボタンを押してメールを送り出した後に,セキュリティ対策ソフトがいったんその電子メールを保持。操作者に対して相手先電子メール・アドレスの再入力を促す。実際に出したメールの相手先アドレスと,ここで入力したアドレスが一致しなければ,セキュリティ対策ソフトが電子メールの送信を中断する。送信メールのウイルスの有無を常にチェックしているセキュリティ対策ソフトであれば,このような機能を盛り込むのは造作ないことだろう。

 すべての送信メールに対してアドレスを2度打ちすることが煩雑だというのであれば,例外処理を設ければよい。例えばドメイン名をあらかじめ登録しておき,そのドメイン名を含むメール・アドレスであれば再入力を省略するといった方法だ。こうしておけば,社内メールに対してもいちいちアドレスを2度打ちする手間は省ける。

 ここではセキュリティ対策ソフトに機能を盛り込むというソリューションを例に挙げたが,そういう専用ソフトを作っても良いし,あるいは電子メール・ソフト自体にそういう機能を持たせても良いだろう。

 Double Dialを販売するレッツ・コーポレーションによると,今回Double Dialを発売することにしたのは,これまで個別対応してきた金融機関などの引き合いが多くて,商品化すれば一般企業などにも売れるだろうと踏んでのことだという。ビジネスチャンスと考えたのだ。この原稿を読んでいるソフト会社の皆様。もしかして,ソフトウエアとしてもビジネスチャンスにつながるかもしれませんよ。