米ナビーニ・ネットワークスでアジア・パシフィックのマネージング・ディレクターを担当するマイケル・ウォン氏
米ナビーニ・ネットワークスでアジア・パシフィックのマネージング・ディレクターを担当するマイケル・ウォン氏
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 総務省は現在,2.5GHz帯を利用した高速無線ブロードバンド技術を検討中だ。その本命と目されているのが,モバイルWiMAX(IEEE 802.16e)。既に通信事業者による周波数獲得競争がぼっ発し,機器ベンダーの競争も始まりつつある。モバイルWiMAXの基地局や,クライアント向け通信装置を提供する米ナビーニ・ネットワークスのマイケル・ウォン・マネージング・ディレクターに,他のベンダーに比べた優位点や日本市場に向けた取り組みを聞いた。(聞き手は榊原 康=日経コミュニケーション

--無線を利用した高速データ通信には,他にも携帯電話や無線LANがある。モバイルWiMAXのメリットは。

 ユーザーが無線ブロードバンドに求めているのは,「高速」かつ「安価」で,「いつでもどこでも」誰でも「簡単に利用できる」サービス。これらの条件をすべて満たせるのはモバイルWiMAXだけだろう。

 モバイルWiMAXの通信速度は,20MHzの帯域を利用した場合で最大75Mビット/秒。無線LANではさらに高速な製品が登場しているが,いつでもどこでも使えるわけではない。現状は提供エリアの面で課題が残る。一方,携帯電話は提供エリアが広いが,料金が高く,通信速度もモバイルWiMAXや無線LANに劣る。モバイルWiMAXは,無線LANや携帯電話が抱える課題を克服した無線ブロードバンドの本命と言える。

--総務省が開催している2.5GHz帯を利用した高速無線ブロードバンドの技術検討会では,IEEE 802.20を推進するクアルコムが「モバイルWiMAXは広帯域無線ブロードバンドの技術要件を満たさない」と主張している。

 クアルコムが総務省に提出した評価結果は我々も見た。しかし,利用している周波数帯や基地局間の距離などが,モバイルWiMAXとIEEE 802.20で異なる。同じ条件で検証しなければ単純に比較できない。例えばクアルコムの評価結果では「モバイルWiMAXのセルのカバー率は95%」となっているが,基地局間の距離をIEEE 802.20と同じ条件にすればカバー率は100%に限りなく近づくだろう。また,これは事業者がどのように基地局を設置していくかというサイト・エンジニアリングの問題になる。

 ただ,モバイルWiMAXが一つの基地局でカバーできるエリアが狭いのは事実。ユーザーが許容できる十分なスループットを確保するには,基地局のセル半径を500メートル程度で設計する必要がある。これはOFDMA(orthogonal frequency division multiple access,直交周波数分割多重アクセス)を採用した無線方式であれば,すべてに当てはまるのではないか。そこで,我々の製品は「スマートアンテナ技術」を搭載することで,セル半径を2キロメートル程度まで伸ばせるようにしている。

--スマートアンテナ技術の特徴は何か。

 当社は,モバイルWiMAXでスマートアンテナ技術を実装した初めてのベンダー。スマートアンテナとは,狙ったユーザーに対して指向性のビームを自動的に向ける技術のことだ。前述したように,我々の製品を利用すれば半径500メートルのマイクロセルではなく,2キロメートルのマクロセルで基地局を設計できる。事業者は基地局の投資コストを抑えることが可能となる。我々の試算では他の製品を利用した場合に比べ,投資コストを約60%節約できる。

 またスマートアンテナを含む我々の「Smart WiMAX」技術を利用すれば,周波数の利用効率も高まる。ある調査会社の評価結果では,他製品の約2倍に当たる3.0bps/Hzの周波数利用効率を実現している。製品の使い方も簡単で,通信カードやモデムを接続するだけでプラグ・アンド・プレイで利用できる。

--日本市場に向けた今後の取り組みは。

 2.5GHz帯を使った無線ブロードバンドにはIEEE 802.20や次世代PHSも候補に挙がっているが,周波数の利用効率が高く,コストも安いモバイルWiMAXが残るのは間違いない。日本のパートナである日商エレクトロニクスと一緒に,モバイルWiMAXを普及・促進させていきたい。いくつかの事業者とは既に交渉を開始したところだ。