NTTドコモの永田清人・プロダクト&サービス本部プロダクト部長
NTTドコモの永田清人・プロダクト&サービス本部プロダクト部長
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 NTTドコモはカナダのリサーチ・イン・モーション(RIM)と提携し,今秋からBlackBerry端末を投入する。W-CDMAとGSM/GPRSの二つの通信方式に対応し,QWERTY配列のキーボードを搭載した点が特徴。NTTドコモの永田清人プロダクト&サービス本部プロダクト部長に,提携の経緯やスマートフォン市場に向けた戦略を聞いた。(聞き手は榊原 康=日経コミュニケーション

--RIMと提携した経緯は。

 BlackBerryは,欧米で人気の高いスマートフォン。以前から国内でも提供したいと考えており,RIMと話し合いを進めていた。今回提供に至ったのは,BlackBerry端末が第3世代携帯電話(W-CDMA)に対応した点が大きい。

 BlackBerry端末は,法人向けのモバイル・ソリューションとして提供する。「BlackBerry Enterprise Server」と呼ぶゲートウエイを社内に設置し,グループウエア・サーバーなどとスケジュールやメールを同期する用途が中心になる。BlackBerry Enterprise Serverには,インターネット経由でアクセスする。

--BlackBerry端末は日本語化しないと聞いたが。

 端末をRIMと共同開発するわけではない。通信などの部分は調整するが,そのまま端末を持ってくるイメージに近い。BlackBerryブランドで提供するのは,このためだ。メニューも英語表示になる。

 当面のターゲットは,既に欧米でBlackBerryを活用しているグローバル企業が中心になるだろう。実際,「海外では使えるのになぜ日本で使えないのか」といった声が多く寄せられている。このような企業の多くは,英語でコミュニケーションをとっている。英語表示でも問題にならないだろう。もちろん,日本語対応を軽視しているわけではない。アプリケーションの日本語入力などは,別ソリューションとして対応する予定だ。

--スマートフォンには昨年7月に投入した「FOMA M1000」もある。M1000とはどのような売り分けになるのか。

 当社はこれまで,何でもオリジナルなものを提供してきた。M1000は個人と法人の両方の市場を狙い,NTTドコモのネットワークやサービスに合わせて開発した。一般の携帯電話と同じように電話帳のコピー・サービスなども利用できる。だからNTTドコモのブランドが付いている。

 ただしオリジナルなものを開発すると時間がかかり,マーケットへの投入が遅れるだけでなく,端末コストが高くなる。法人向けは個人向けと違って販売台数が少ないので,あまり開発費をかけられない。そこで法人向けに関しては,世界で標準的に利用されている端末,流行している端末をそのまま調達し,いち早く提供する方針に変えた。その方が結果としてユーザーの利便性も高くなる。

 その第1弾は,今年の2月に発表した台湾HTC(High Tech Computer)製のWindows Mobile端末。HTCブランドで今秋以降に提供する予定だ。携帯電話(W-CDMAとGSM/GPRS)と無線LANに対応したデュアル端末で,QWERTY配列のキーボードも搭載する。

 そして第2弾がBlackBerryだ。ユーザーはアプリケーションのプラットフォームとして,(1)M1000,(2)Windows Mobile搭載のHTC端末,(3)BlackBerry端末,の三つから自社に適したものを自由に選べるようになる。

--これまで多くの携帯情報端末(PDA)が登場しては消えた。スマートフォンも厳しいイメージがある。

 確かにPDA市場は沈みっぱなしだ。しかし今後も市場がないとは思わない。外出先で仕事をしなければならないユーザーが増え,携帯電話で資料を作成・閲覧したいというニーズは根強い。これまではパソコンがその役割を担ってきたかもしれないが,パソコンは持ち運びに不便。電源を確保して座って作業する用途が中心になる。スマートフォンが活躍するシーンはもっと増えるはずだ。

 ウィルコムが昨年12月に投入したPHS端末「W-ZERO3」が成功例。市場は十分にある。我々がやらなくても他の事業者がやるだけ。Windows Mobileはどう考えても無視できないし,BlackBerryも他の事業者に取られたくない。有力な端末メーカーと組み,スマートフォン市場を取っていきたい。

 法人向けにはFOMA/無線LANのデュアル端末「N900iL」もあるが,こちらはスマートフォンではなく,一般の携帯電話の延長として考えている。無線LANもデータ通信ではなく,音声通話の用途を想定している。後継機種の投入も考えているが,時期はまだ決まっていない。