「ワンセグ放送局探検隊」と題して毎週木・金曜日にTV局の担当者インタビューを続けている。そのインタビュー取材に同行したり,記事査読をした印象は,「ワンセグはまだまだだなぁ」というものだ。

 どの放送局の担当者もワンセグ対応の携帯端末がまだ少ないと口をそろえ,「始めて2カ月あまりなので,今は試行錯誤の段階だ」という。ビジネス・モデルも確立していない。広告収入のほか,eコマースとの連携による商品販売,着うたのようなデジタルデータのダウンロード販売などが検討・実験されているものの,ビジネスとして成り立つまでには,あと何年もかかりそうな雰囲気である。

 特に大きな壁と私が感じたのは,ワンセグでニッチタイムを取り込むことが本当にできるのかということだ。通勤・通学途中で携帯電話機を使ってメールをやり取りしたり,携帯サイトへアクセスしている光景は,今や当たり前になっている。これは携帯電話機がちょっとだけ暇になったユーザーの時間(ニッチタイム)をうまく取り込めたからだ。では,ワンセグ放送が今の携帯の利用形態を超えるサービスを提供できるかというと,私にはそんなサービスが思いつかない。

 日本テレビ放送網メディア戦略局メディア事業部の佐野徹氏の発言を借りると,そもそも「映像コンテンツは,ニッチタイムには向いていないかもしれない」(『日本テレビ放送網[前編]---「わかりやすく楽チン」を追求してニッチタイムを取り込みたい』参照)。映像コンテンツは,たとえ30秒間のものでも終わりまで視聴しないとオチが来ないからだ。メールやWebのようなテキスト・ベースのコンテンツは斜め読みができ,時間があるときはゆっくりと読み返すこともできる。つまり,テキスト・コンテンツは,ユーザーが時間をコントロールできるが,映像コンテンツは使う時間を提供者側が決めてしまうのだ。

 この弱点はどうしようもない気がする。では,ワンセグはニッチタイムとは別のユーザー時間を奪取できるのだろうか。この問題を解決するサービスは,まだ見えていない。