米Microsoftは5月下旬に技術資料「Windows Vista Beta 2 Technical Reviewer's Guide」を公開した。この中には,Windows Vistaに搭載される新機能をすべて網羅した一覧表が掲載されていた。ITproでは今回から3回に分けて,この一覧表をより分かりやすい形式で掲載する。第1回は,Windowsの基本機能とセキュリティである。

 Microsoftの資料によれば,Windows Vistaには100個以上の新機能が搭載される。今回の記事ではそれらを,「Windowsの基本機能」「セキュリティ機能」「ネットワーク機能」「Windows Serverとの連携機能」「使い勝手にかかわる付属ツール」「エンターテインメント機能」「ノート・パソコン関連機能」に分類した。これらの一覧表は,以下のスケジュールで公開する予定だ。

第1回-Windowsの基本機能とセキュリティ機能
第2回-ネットワーク機能とWindows Serverとの連携機能
第3回-付属ツールとエンターテインメント機能,ノート・パソコン関連機能

 まず本文下の表1では,Windows Vistaの基本機能を取り上げる。ここで注目したいのは,「Windows SuperFetch」や「Windows ReadyBoost」「Windows ReadyDrive」といった,大容量メモリーや大容量フラッシュ・メモリーを使って,Windowsの処理性能を向上させる機能である。

 Windows SuperFetchは,ユーザーが頻繁に利用するアプリケーションをあらかじめメモリーにロードしておくことで,起動時間を短縮する機能だ。Windows ReadyBoostとWindows ReadyDriveは,フラッシュ・メモリーを仮想記憶のキャッシュとして利用する機能だ。

 フラッシュ・メモリーをキャッシュとして使う利点は,ハードディスクへのアクセスを減らせることである。ディスクの回転をより長く停止できるので,振動などに対する信頼性が増すほか,バッテリー駆動時間を長くできる。

 なお表にある「HB」「HP」などは,Windows Vistaのバージョン(Windows XPでいうところのEdition)であり,HBは「Home Basic」,HPは「Home Premium」,Bは「Business」,Eは「Enterprise」,Uは「Ultimate」である。

表1●Windowsの基本機能
機 能 名 HB HP B E U
Windows Vista Basicユーザー・インターフェース
Windows Aero
Glass,Windows Flip,Windows Flip 3D,ライブ・タスク・バー・サムネイル,ダイナミック・ウインドウ
 
OSに統合されたインスタント検索機能
ファイルのプロパティやタグ情報に基づいたコンテンツの自動分類機能
Internet Explorer 7+
タブ・ブラウジング,クイック・タブ,統合検索機能
Internet Explorer 7+
RSSフィード対応
WinFX用アプリケーションの対応
Windows SuperFetch
コンピュータのレスポンスやシステム・パフォーマンスを改善する機能。どのアプリケーションが頻繁に使われるかトラッキングし,あらかじめそれらをメモリーに読み込むようにする
Windows ReadyBoost
コンピュータのレスポンスを改善する機能。システム情報の主要な部分をUSBフラッシュ・ドライブにキャッシュする
Low-priority I/O
コンピュータのレスポンスを改善する機能。優先度の低いプロセスを,なるべくバックグラウンドで実行する
自動ディスク・デフラグメンテーション
コンピュータが使用されていないときに,ディスク・デフラグを自動的に実行する
音声認識機能
音声(スピーチ)を使ってコンピュータを操作する機能
アクセス・センター
利用可能な設定項目が1カ所に集約されている
ウエルカム・センター
初期設定を簡単に素早く行える機能
XPSドキュメントへの対応
新しい印刷/ディスプレイ表示用文書フォーマットXPS(XML Paper Specification)への対応
Small Business Resources
中小企業ユーザー向けに,パソコンを使って実務上何ができるのか,分かりやすく説明したガイド
     
Windows Fax and Scan    
ハングやクラッシュ,再起動を減らす機能
システムやプログラムが応答しなくなる一般的なケースを阻止する新技術
パフォーマンス・セルフ・チューニング機能とハードウエア診断機能
パフォーマンスに関する様々な問題を自律的に修正する機能
Windows ReadyDrive
ハイブリッド・ハードディスク技術の使用によって,処理性能やバッテリー稼働時間,ノート・パソコンの信頼性などを改善する
Windows Display Driver Model(WDDM)
グラフィックスの安定性と信頼性を向上させる新しいディスプレイ・ドライバ・モデル
64ビット・プロセッサ(x64)対応
起動/シャットダウン/スリープの高速化
スタートアップ・プロセスの高速化
デュアル・プロセッサ(ソケット・ベース)対応    
多言語版(MUI)Windowsの同時インストール機能
カスタマイズされた1個のOSイメージから複数の言語版のWindowsをインストールする機能
     
36カ国語対応      
Windows Anytime Upgrade
Windowsのバージョンやエディションを迅速かつ簡単にオンラインでアップグレードする機能
   
Windows Ultimate Extras
Windows Vista Ultimate editionユーザー向けの追加サービス/ソフトウエア
       
電力管理機能の改善

 セキュリティ機能(表2)で注目したいのは,スパイウエア対策機能やフィッシング対策機能が,OSの標準機能として搭載されたことである。フィッシング対策機能は「Internet Explorer 7+」以外にも,Outlook Expressの後継メールソフト「Windowsメール」にも搭載されている。

表2●セキュリティ機能
機能名 HB HP B E U
User Account Control
潜在的に危険なソフトウエアを実行しようとしたときにユーザーに警告を発する機能
Windowsセキュリティ・センター
セキュリティ情報や設定を一元管理する画面
Windows Defender
スパイウエアをスキャンし削除する機能
Windowsファイアウオール
ネットワークを保護し,悪意のある攻撃からコンピュータを保護する機能
Internet Explorer 7+ プロテクト・モード
ユーザーが作成したファイルやシステム・ファイルにアクセスできないよう,ブラウザの機能を制限する機能
Internet Explorer 7+ フィックス・マイ・セッティングス機能
ユーザーが潜在的に危険なセキュリティ設定を施した場合に警告する機能
Internet Explorer 7+ アンチ・フィッシング機能
潜在的に危険なWebサイトにアクセスした際に警告するビルトイン機能
Windows Mail アンチ・フィッシング機能
潜在的に危険なWebサイトに接続しようとする際に警告するビルトイン機能
Windows Update
Microsoftのサーバーもしくは社内のWSUSサーバーからパッチをダウンロードする機能
保護者による制限
子供のコンピュータ利用を制限する機能
   
サービス・ハーデニング(Hardening=硬化剤)
ファイル・システムやレジストリ,ネットワークにおいて,重要なWindowsサービスが異常な用途に利用されないようにする機能
認証手法の入れ替えが可能なログオン認証アーキテクチャ
サード・パーティ製の認証手法が利用できるよう,ログオン認証システムが作り込まれている
   
暗号化ファイル・システム    
Windows BitLocker Drive Encryption
ボリューム全体を暗号化し,起動プロセスを保護する機能。コンピュータ本体が盗難にあった場合でも,内部のデータを保護できる
     
統合されたスマート・カード管理
スマート・カードの認証情報の書き換えなどに関する新しい技術スキームに対応している