=== (後編を読む) ===

 日本テレビ系列で,関西の民放局「讀賣テレビ放送」。民放としては初めて,2005年12月からワンセグ放送の試験放送サービスを始め,今年4月1日の本格サービスに入って積極的に事業を展開している。コンテンツ開発事業局局次長の富田求氏に,ワンセグ放送の取り組みと,今後の展開を聞いた。

(聞き手は隅倉 正隆=IT放送技術ジャーナリスト兼コンサルタント)





讀賣テレビ放送のワンセグ放送トップ画面


讀賣テレビ放送が制作する番組連動画面「ダウンタウンDX」

---2006年4月の本格サービス開始から約2カ月がたちましたが,ワンセグの視聴者の反応はどうでしょうか?

 基本的には端末が十分に普及しているわけではないので,視聴者からのダイレクトな反応というのはあまりありません。ただ,5月6日に深夜帯の単発ドラマ「春 君に届く」という番組と連動させて,ヒロインのブログをデータ放送しました。このヒロインのブログは,番組の進行に合わせてデータを放送するもので,電話回線などを介さずに番組を視聴しながらヒロインのブログを視聴できます。アクセス数を見ると,それなりの反応があり,色々なブログ記事に取り上げられたりして,深夜帯の割には評判はよかったと思います。

 やはり,番組と連動したデータ放送を提供すれば,興味を持ってサイトにアクセスしてくれるという感触を持つことができました。

 これ以外にも,我々が制作する全国放送レギュラー番組である「ダウンタウンDX」というバラエティ番組でも,ワンセグ放送で番組連動のデータ放送を行っています。そのデータ放送でプレゼント応募をすると,手軽さという面もあると思いますが,そこそこのワンセグ視聴者が応募してくれます。

 地上デジタル放送のデータ放送と比べて,ワンセグ放送は受信機が携帯電話ということもあり,簡単に双方向通信が可能なので,ワンクリック,ツークリックでプレゼントに応募できるんです。端末がもっと広く普及すれば,もっと大きな反応が出ると思っています。

---ワンセグの視聴者層はどう捉えていますか?

 今,ワンセグ端末を持っている最多層は,新しいメディアに関心が高い30代の男性だと,我々は考えています。これが20代の男女や,女子高生・女子大生に広まり,さらには40代,50代以上の世代に広がればブームになると思います。ワンセグの便利さや簡単さなどの新しい威力が発揮されれば,携帯電話を使いこなせていない50代以上の方々にも使ってもらえると期待しています。

 最近,ワンセグ放送を電車の中で見ている30代の男性を多く見かけるようになりました。また,プロ野球や競馬などのスポーツ・コンテンツは反応が良いという話もあります。

---讀賣テレビでのワンセグ放送に関する具体的な取り組みは?

 データ放送や1次リンク(「第2回 ワンセグ放送のサービス・イメージ」の図3参照)のコンテンツを充実していくことが課題です。クリアな映像や音と一緒に表示されているデータ放送をもっと利用してもらえるようにしたいわけです。ここを充実させないと,ワンセグというメディアも発展させられないと思います。

 ただ,データ放送や1次リンクが,当面は直接ビジネスにできないのが,我々にとって苦しいところです。

 日本テレビ系列としては,「ダウンタウンDX」での番組連動サービスのように,ゴールデンプライムで少なくとも1番組は番組連動サービスを提供するようにしています。

 また,プロ野球などのスポーツ・コンテンツや,ワンセグのゴールデンタイムといわれている通勤時間帯のズームイン・スーパーなどの番組と連動するサービスも提供しています。

 ズームイン・スーパーの番組連動サービスは,かなり手ごたえはあります。同じデータ放送でも,50%の人は番組と連動したデータ放送を利用しているというデータもあります。すなわち,データ放送や1次リンク・コンテンツを充実させれば,必ず利用者は来てくれるという確信をもってやって行かないといけないんです。

 そういう意味もあって,「ダウンタウンDX」や「ズームイン・スーパー」などの情報提供型番組連動サービス以外に,利用者の参加・利用を前提とした番組連動型データ放送の検討を進めています。具体的には,スポーツ中継番組と連動する利用者参加型のサービスです。特にゴルフやマラソンなどのスポーツ中継番組との連携で,利用者に体感できるデータ放送,例えば「誰が優勝するか」,「第2区間のタイムは」などを視聴者が参加・体感できるデータ放送サービスをやりたいと考えています。現在,スポーツ中継に参加・体感できるソフトを開発中です。

---現在,ワンセグの番組連動サービスとして,どのような番組を提供していますか?

 ワンセグ放送の番組連動サービスは,先ほども言ったように,プライムタイムにおいて最低でも1個の番組に対して,番組連動データ放送を提供していくという方針で,以下の番組について,番組連動データ放送を行っています(表1)。

表1 番組と連動するデータ放送番組の一覧

 さらに7月からは,徐々にオリジナル・コンテンツ(ハブメニュー)を増やしていこうと考えています。例えば,日テレグルメと同じように,独自にリクルートと話をしてYTVグルメを展開し,中京テレビさんもCTVグルメを展開できれば,連動した形で全国展開が可能になるし,我々独自に他業種の方々との話し合いの中から新しいコンテンツを開発し,提供して行くことを考えています。

 在阪局で制作している全国放送のレギュラ番組と連動したデータ放送サービスを提供しているのは,現在2局しかありません。1社が弊社の「ダウンタウンDX」で,もう一つは関西テレビです。そちらは,「あるある大辞典」,「ぶすの瞳に恋している」,「ドリーム競馬」が連動しています。

===> 後編へ続く