写真 総務省情報通信政策局情報通信政策課の三田一博・新事業支援推進官
写真 総務省情報通信政策局情報通信政策課の三田一博・新事業支援推進官
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 総務省は2005年後半から日記形式でユーザーの意見を記述する「ブログ」や招待制を取り入れたWebコミュニティ・サービス「SNS」の企業による活用促進に本腰を入れ始めた。同省で普及を推進している情報通信政策局情報通信政策課の三田一博・新事業支援推進官に今後の施策を聞いた。(聞き手は市嶋 洋平=日経コミュニケーション

−−なぜ総務省がブログやSNSの普及に乗り出すのか。通信回線を利用してもらうためのコンテンツの一つとして取り組んでいるのか。

 通信回線の利用の側面だけを見ているのではない。ブログやSNSで企業内や企業間の情報流通を円滑化するのが目的だ。個人では無料サービスを利用することで普及が進んだが,ビジネスでは利用があまり進んでいない。

 この状況を打破するため,実際にビジネスでブログやSNSを利用しているユーザー事例を募集し,他の企業の参考にしてもらおうと考えた。

−−2005年10月に企業の事例を募ったとのことだが,反応は。

 総務省としては50件程度集まれば十分と思っていた。ところが,12月に締め切ってみたら,予想を上回る136件だった。

 中には従業員数が1000人以上の大企業もあるが,数としては5人以下の企業が一番多かった。開業医や税理士事務所,社会保険労務士事務所などがこれに含まれる。2006年2月には,この中から特に参考になりそうなブログやSNSを選定して,企業事例の発表会を開催する予定だ。

−−ブログやSNSを活用することで,ビジネス面でどういったメリットがあるのか。

 ブログのメリットは大きく二つ。一つは自社サイトの魅力向上。ブログは更新が容易なため,タイムリーな情報を提供できる。また,もう一つのメリットとして販売面の効果がある。商品やサービスに対する顧客の意見を集めたり,口コミによる宣伝効果も期待できる。

−−活用に向けた課題は。

 例えば,ブログであれば社内向けと社外向けで課題が異なるだろう。社内向けのブログであれば,社員が書き込むことに対する表彰制度などを導入してモチベーションを高める必要がある。そうしないと利用が根付かない。

 一方で社外向けでは,優秀な執筆者を選定することはもちろん,悪質なトラックバックやコメントへの対処といった課題がある。こうした悪質な行為に企業や利用者からの要望があれば,ルールの策定などを検討したい。

−−そもそもブログやSNSはどの程度の利用者がいるのか。

 2005年9月末の時点でブログのサイトを持つ登録者数が473万。SNSが399万と集計した。大手のプロバイダを中心に総務省が聞き取り調査を実施した。今後は,ADSLやFTTHなどブロードバンド回線数と同様に定期的に発表していきたい。毎年9月と3月を予定している。

 2,3年後にはブログやSNSを利用していない企業はなくなると考えている。企業のホームページと同じであるのが当然,ないと生き残れない時代がくるだろう。