図1 ネットワーク関連で押さえておきたい3種類の標準規格<BR>われわれが普段使っているネットワーク機器のほとんどはIEEE,IETF,ITU-Tが規定する標準規格に準拠して作られている。
図1 ネットワーク関連で押さえておきたい3種類の標準規格<BR>われわれが普段使っているネットワーク機器のほとんどはIEEE,IETF,ITU-Tが規定する標準規格に準拠して作られている。
[画像のクリックで拡大表示]

 イーサネットや無線LAN,ADSLなど身の周りで使われているネットワーク技術の多くは「標準規格」として仕様が決まっている。つまり,ネットワーク技術の最新情報を知りたくなったら,原典であるそれら標準規格の規格書に当たってみるのがベスト。そこで今回の調査隊では,代表的な規格書の入手方法を調べてみた。

 「読者から,無線LANの規格であるIEEE(アイトリプルイー)802.11e*について最新情報を知りたいがどうすればいいのかってメールが届いたぞ」とデスクがプリント・アウトを持ってやってきた。

 「それって,2年くらい前からもうすぐ標準化が完了予定だって言われているのにまだ完了していない規格ですよね。確かに今どんな状況なのか気になるなあ」と私。「ちょっと最新情報を調べてみてくれ」とデスク。

 「わかりました。IEEE802.11eの規格書かドラフト文書*を入手すればいいんですよね。でも実は私,規格書やドラフト文書をどうやって入手すればいいかよく知らないんですが」。

 「規格書の入手方法がわからないって?今まで記事を書くときはどうしてたんだ」。今にも雷が落ちそうな雲行きになってきた。

 「いえ,もちろん必要なときにチェックしていますよ。でも,よく使う規格書はうちのファイル・サーバーに入っていますし,それ以外は取材先に見せてもらったりしているんです」とあわてて取り繕う私。

 「そういうことか。じゃあいい機会だから,IEEE802.11eだけでなくほかの主要なネットワーク技術に関する規格についても,入手法をまとめて調べてもらおうか」。

押さえておきたい規格は3種類

 ネットワーク分野には,実にさまざまな標準規格が存在する。LANケーブルやコネクタに関する規格から,イーサネットや無線LAN,ADSLなどの回線技術に関する規格,TCP/IPをはじめとするネットワーク・プロトコルに関する規格——。

 ただ,そうした無数にある規格の中で,われわれネットワーク・ユーザーにとって必要となる規格の種類は,ほぼ三つに限られる。それは,IEEEとITU-T*,そしてIETF*が策定する標準規格である(図1[拡大表示])。この三つさえ押さえれば,身の周りにあるネットワーク機器やサービスで使われている主な技術はだいたいカバーできる。そこで今回は,これら3団体が発行する最新の規格書やドラフト文書を手に入れる方法を探ってみることにする。

 まずは,各団体がそれぞれどういったネットワーク技術を標準化しているのかを簡単に整理しておこう。

 IEEEは,IEEE内に設置された802委員会という部門で,主にLANで使う規格を標準化している。おなじみのイーサネット(IEEE802.3)や無線LAN(IEEE802.11)などはIEEE802の代表的な標準規格である。

 ITU-Tは,主に電話やWAN系のネットワーク技術の規格を標準化する組織。ITU-Tでは,技術分野ごとに標準化作業を進めるグループ(SG*)を設置し,それぞれのグループが規格(勧告*)を策定する。勧告はA~Zまでのシリーズに分類されており,電話用モデムの仕様などを規定した「Vシリーズ」や,ADSLやIP電話の音声符号化方式を規定した「Gシリーズ」などがある。

 IETFは,インターネットで使われる標準規格を記した技術文書である「RFC*」を発行する団体だ。IPやTCP/UDPなどインターネットの土台となるプロトコルをはじめ,その上で動くHTTPやDNSなどのアプリケーション・プロトコルもほとんどすべてこのRFCで仕様が決まっている。