ツーカー・グループを吸収することで,KDDIの携帯電話事業のシェアが25%を越えることとなった。地域ごとに端末シェア25%を越える携帯電話事業者は「第二種指定電気通信事業者」となる。既に,ドコモ・グループ各社と沖縄セルラー電話がこの指定を受けており,KDDIもその仲間入りをすることとなった訳だ(参考記事)。ちなみに,「第一種」とは50%越のシェアを持つ固定電話事業者である。
指定電気通信事業者となると,他の電気通信事業者との接続料金や約款を定め,総務大臣に届け出る必要がある。しかも,この約款に不明確な点があったり,適正な利潤を越えた料金だと総務省が認めた場合は,変更を命じられる。かなり厳しい規制と解釈できなくもないが,実際には,数年前まで,旧第一種電気通信事業者の約款はシェアにかかわらず認可事項であった。それを思えば,さほど「支配的」であることを意識した規定とは思えない。
ところが,売り上げのシェアが25%を越えると,少し事情が変わってくる。売り上げシェア25%を越える事業者は「接続の業務に関して知り得た情報を,当該業務以外の目的に利用してはならない」「特定の電気通信事業者に対し不当に有利/不利な扱いをしてはならない」など「禁止事項等」を行ってはならなくなる。明らかに,その事業者が「支配的」な立場にあることを想定した規定である。
しかも,前者の規定が「やるべきこと」を規定しているのに対し,後者は「やるべきでないこと」を規定している。「やれ」と言われたことは,多少の不満があっても,やってさえおけば,おとがめはない。だが,後者の場合,従来からやっている通常の業務(と当事者は思っている)が,規制当局から見れば「禁止事項」となってしまう可能性もある。
あくまで仮定の話だが,移動通信部門から固定通信部門に異動したスタッフが,前の職場で知り得た情報を異動先でのマーケティングに活用するなどは,情報の内容によってはクロもしくはグレーになるのではないだろうか。「そこを何とかお願いします」とまとめたはずの商談が,「不利な扱い」と解釈される可能性もある。となれば,あらぬ疑いを避けるには,人事政策や営業活動などにも制限を受けることになりそうだ。
1年後には新規事業者が携帯電話市場に参入してくる。迎え撃つKDDI(とドコモ)には「支配的事業者」というハンデが課されることになった。KDDIとドコモのハンデは同じでよいのか。差をつけるとしたらどの程度なのか。KDDIがドコモと“同格に”上り詰めたことで,総務省はまたも難題を抱えてしまったか。