海外で日本語メールを「BlackBerry」で読ませる
NTTドコモUSA 上級副社長 前田正明
――サービスを開発したきっかけは。
海外在住の日本人ユーザーが,外出先や出張先で電子メールを簡単に利用できる方法はないものかと考えていた。
そんな中,米国ではBlackBerryを携帯し,外出先でメールを読み書きしているユーザーが多いことに気づいた。外回りの営業員や役員クラスのユーザーが多いのではないか。特にセキュリティが厳しい金融系企業で,端末を支給しているケースが多いようだ。
こうした経緯から開発に取り組んだ。2004年5月のことだった。
――セキュリティ面でのメリットは。
BlackBerryはRIMのサーバー・ソフトを導入することで,会社のメール・サーバーに直接アクセスできる。このため,セキュリティ・ポリシーから会社のメールを外部のアドレス転送することを禁止している企業でも利用できる。
しかもBlackBerryのメール・アプリケーションはブラウザ・ベース。端末側にデータが残らないため,たとえ端末を紛失してもメールの情報が流出することはない。紛失してもサーバー側でIDを無効にすれば,アクセスできなくなる。メール・サーバーは米IBMの「Lotus ノーツ/ドミノ」と米マイクロソフトの「Exchange Server」に対応している。
――開発で苦労した点は。
英語しか扱えないBlackBerryのメール・アプリケーションを日本語化した。具体的には,カリフォルニア州パロアルトにあるNTTマルチメディア・コミュニケーション研究所とともに開発した,Javaアプリケーションを搭載している。
現在のところ試験的にサービスを実施している段階で,日本語のメールの閲覧ができる。これに加えて本サービスを始める時にはメールの入力も可能となる。日本語は第1と第2水準の漢字とほぼ同様の6879文字が表示できる。
日本語を表示した BlackBerryの画面 |
――ユーザーへの提供方法を教えてほしい。
BlackBerryの日本語Javaアプリケーションは,当社が日本国外のユーザー向けに昨年11月に始めた無線LANアクセス・サービス「namikiteru(波来てる)」のユーザー向けに提供する。
現在のところ,namikiteruのユーザーに試験的にJavaアプリケーションを使ってもらっているところ。200~300社の企業ユーザーに試験的に利用していただいている。端末は情報システム部門を通じて2~3台を配布した。
10月には本サービスとして,namikiteruにBlackBerryの日本語アプリケーションが利用できるメニューを用意する。その際にはメールを読むだけでなく,書いて送信できるようにする予定だ。料金は基本月8.99ドルで,1分当たり0.25ドルの無線LAN接続サービスの利用料もあわせて徴収する。
本サービスでは,BlackBerryの端末はユーザー自身に用意してもらうが,機器の購入などの手続きを教えるなどのサポートをしていく。
――namikiteruのサービスはどこで利用できるのか。
namikiteruは自社のアクセス・ポイント(AP)だけでなく米iPass,NTTコミュニケーションズのAPを基本料金内で利用できる。使える場所は,世界60カ国で1万5000カ所以上ある。自社では,今のところニューヨークのJFK国際空港など3カ所に設置している。
現在,空港でサービスを提供している公衆無線LAN事業者と契約交渉を進めており,今冬には搭乗者の多い全米の主要20空港ではAPを利用できるようになる。
対応するBlackBerryを使えば,携帯電話のデータ通信も利用できる。ユーザー自身に携帯電話の事業者と契約してもらうことになる。
――NTTドコモUSAとして,BlackBerryを利用したソリューションを提供するのか。
現時点でソリューションの提供は考えていない。ユーザーからの要求があれば,外部のシステム開発会社と連携することになるだろう。米国ではBlackBerryから社内のERP(enterprise resource planning)システムを利用できるようにしているユーザーも多い。
――日本での提供予定や今後の展開は。
namikiteruやBlackBerryの日本語化はあくまでもNTTドコモUSAの単独事業。日本での展開は考えていない。海外に駐在する日本企業のユーザーに使いやすい無線とメールのサービスを提供するのが目的だ。現在のところ,namikiteruのユーザーは米国のほか,カナダ,オーストラリア,香港,ドイツ,英国などにいる。
今後は,BlackBerryに標準搭載されている,スケジューラや住所録でも日本語が利用できるようにしたい。