「ベストサービス」では、企業利用の観点から優れた特徴を備えるクラウドサービスと、そのサービス提供ベンダーを、7部門について選出している。今回は2013年7月末時点で顧客に提供可能なサービスを対象に調査を行った。215社に対して調査への協力を依頼している。

 最初にIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)やPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)を提供する「クラウド基盤サービス(IaaS/PaaS)部門」の結果を紹介する。同部門では12のベストサービスを選出した(表1)。

表1●クラウド基盤サービス(IaaS/PaaS)部門のベストサービス
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 クラウド基盤サービス部門では、ハードリソースやソフトリソースなど9分野47項目の評価を行っている。今回は、サイバー攻撃の深刻化に伴って「ソフトリソース関連」分野で「ウイルス対策ソフトの動作保証」という評価項目を、「セキュリティ関連」分野で「サイバー攻撃に対する24時間365日の監視」という評価項目を追加した。セキュリティ関連分野の配点も前回に比べて2点増やし、14点にした。

 サイバー攻撃に対する24時間365日の監視は、12のベストサービスのうち、10サービスにおいて「標準で可能」と高い水準にあった。クラウド基盤サービス部門では今回、68サービスを評価している。25サービスと全体の約3分の1がサイバー攻撃に対する24時間365日の監視を標準で可能としているが、ベストサービスではほぼ当たり前になっている。

国内実績を伸ばすMSのAzure

 総合スコアが最も高かったサービスは、NTTコミュニケーションズの「Bizホスティング」で69.9だった。前回のスコア69.4から0.5増えている。9分野中8分野で満点を得た。

 NECの「BIGLOBEクラウドホスティング」も69.0と高い総合スコアを獲得した。BIGLOBEクラウドの総合スコアは、前回の67.0から2ポイント増加している。前回、満点を獲得した分野は「ハードリソース」など4分野だったが、今回は6分野で満点を得ており、勢いを感じる。

 日本マイクロソフトの「Windows Azure」は、前回の64.9から今回65.7へ総合スコアを伸ばした。同サービスの総合スコアが伸びた理由の一つは「実績」分野がアマゾン データ サービス ジャパンの「Amazon Web Services(AWS)」と同様に満点となったことである。

 「実績」分野は前回、得点の算出基準を厳しくして、満点を獲得するために以前より多くの法人ユーザー数が必要となるように変更した。Windows Azureの場合、前回は国内の法人ユーザー数が満点を獲得する水準に達しなかった。今回はその課題をクリアしている。

クラウド基盤サービス(IaaS/PaaS)部門の調査内容

 クラウド基盤サービス部門の調査項目は合計47。各項目は(1)ハードリソース関連、(2)ソフトリソース関連、(3)料金関連、(4)契約関連、(5)運用関連、(6)信頼性関連、(7)保守サポート関連、(8)セキュリティ関連、(9)実績関連の9分野に分かれる。全体で100点満点となるように評価し、平均値が50、標準偏差が10となるように標準化して総合スコアを算出した。小数点第2位以下までを見て総合スコアが62.5以上のサービスを「ベストサービス」として認定した。

【調査項目】

(1)ハードリソース関連(5点)
最小構成、リソースの追加単位(CPU、メモリー、HDD、ネットワーク帯域)、専有リソースの提供

(2)ソフトリソース関連(14点)
利用可能な仮想化ソフト、OS、RDBソフト、分散処理ミドルウエア/NoSQL、アプリケーションサーバー、開発言語、ウイルス対策ソフト

(3)料金関連(13点)
料金体系、標準支払い通貨、最小構成時の初期費用と月額料金、最小構成の内容、料金の課金単位

(4)契約関連(13点)
利用開始時の申し込み方法、構成変更時の指示方法、最低契約期間、利用開始までの期間、構成変更にかかる期間

(5)運用関連(13点)
GUIベースで構成変更可能な管理ツール、サービス構成を管理するAPIの公開、負荷分散/フェイルオーバー機能の提供、システムリソースの自動拡張・縮退、ミドルウエアなどを設定済みのテンプレート数、互換クラウドの他社提供

(6)信頼性関連(14点)
保証するサービス稼働率、サービス停止とみなす処理途絶時間、計画停止の通知時期、稼働状況の定期的な報告、障害・災害発生時の通知方法

(7)保守サポート関連(8点)
サポート時間、サポート受付方法、バックアップデータの保持期間、システムログの開示

(8)セキュリティ関連(14点)
外部機関によるセキュリティ監査・認証、ファイアウォールの設置、閉域網サービスとの接続、サイバー攻撃に対する監視、国内データセンターの指定、海外データセンターの指定

(9)実績関連(6点)
日本国内における法人ユーザー数、全世界における法人ユーザー数

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  • 2013年秋版クラウドサービス総覧 IaaS/PaaS編はこちら
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