海外に進出する企業の増加に合わせ、日本企業の海外拠点の経理業務を支援する会計サービスが充実してきた。多言語多通貨などの機能を持った海外製ERP(統合基幹業務システム)や国産の会計パッケージをオンデマンド型で海外拠点向けに提供する。東南アジアを中心に現地サポートの体制を整えるなどサービス拡充が進む。
海外拠点向けに会計や販売、購買といった会計関連機能を持つアプリケーションをオンデマンド型で提供するサービスが続々と登場している。サービスメニューや利用料金を明確に設定。導入期間の短期化に加え、導入後に東南アジアを中心に海外拠点を現地サポートできる体制などを売り文句にしている(図1)。
この半年間で、IIJグローバルソリューションズやビーブレイクシステムズ、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)、日立システムズの4社が、新たにサービスを提供開始した。
これらに先行して海外拠点向けにサービスを提供しているベンダーも好調だ。ERPサービス「NetSuite」を提供するネットスイート 営業本部プリセールスソリューションコンサルティング部の加藤慶一部長は、同社の最近の動向について、「売り上げが前年比で2.5倍になった」と話す。ネットスイートは2~3年前まで「中小企業向け」を打ち出していたが、「ここ2年、日本企業の海外拠点が売り上げの伸びを牽引している」(加藤部長)。
こうしたサービスが増えている背景には構築期間の短期化を求める顧客の声がある。「最近では長くて半年という顧客が多い。短期の場合は3カ月で利用したいと要望する顧客もいる」と日立システムズ 産業情報サービス事業部第一システム本部第二設計部の佐藤信悟担当部長は説明する。
同社は2013年4月、日本で初めてSAPジャパンの中小企業向けERPパッケージ「SAP Business One」をオンデマンド型で提供するサービスを開始した。日立システムズは以前からサーバーを設置する方法で海外拠点向けのERP導入を支援していたが、「より早く導入できる方法が必要」(佐藤担当部長)と判断した。
「海外拠点のガバナンス強化を狙う大企業が増えている」(ネットスイートの加藤部長)のもサービスが増えてきた一因だ。現地にサーバーを設置して会計システムを構築するのではなく、本社が決めたサービスを海外拠点に展開することで、海外拠点の状況を本社で把握したり、セキュリティを強化したりできるなどのメリットがある。
多言語対応やサポート地域に差
種類が増えつつある海外拠点向け会計サービスだが、導入の際には自社の海外戦略や拠点の状況を踏まえる必要がある。
多くのサービスは多言語や多通貨に対応済みで、複数国での利用を前提にアプリケーションを提供しているが、対応する言語数やサポート可能な地域など、利用開始後の拡張性は異なる。
サポートしている言語では、スーパーストリームの会計パッケージ「SuperStream-NX SaaS版」の2カ国語に対し、SAP Business One OnDemandは27カ国語と大きく異なる。
利用開始後のサポートの場合、日本企業の進出が進むシンガポール、タイ、マレーシアなどでサポートを提供するサービスは多い。一方で米国や欧州などでサポートを提供するサービスは現時点でまだ少ない。
海外拠点向け会計サービスには、提供する業務アプリケーションと、サービスの提供地域で三つのパターンに分けられる(図2)。