SNSを導入した先進企業はどんな場面で活用し、効果を得ているのか。コクヨファニチャー、ガリバーインターナショナル、日比谷花壇、玉屋の事例を見ていく。
コクヨファニチャー
隣で上司が怒るオフィスを再現
「隣に座っている上司や先輩が、部下や若手をすぐ褒めたり注意したりする。こんなオフィス環境の再現を狙った」。コクヨファニチャーの都知木氏は、SNSを活用する狙いをこう話す。
SNSに書き込んだ部下の報告に対して、上司がコメントを付けてアドバイスする。そのやり取りを見た先輩が「いいね!」ボタンを押すこともある。SNSの場で上司が褒めることで、部下のやりがいを引き出せる。そのやり取りを閲覧したメンバーは、「こういう書き方だと上司への報告が分かりやすい」といったノウハウを得られる(図4)。
コクヨファニチャーはSNSを通じてこうしたやり取りを実現している。SNSにメンバーが参加することで、「職場の関係を濃密にし、グループ全員の成長が期待できる」と都知木氏は語る。
「日本企業が強かった20年以上前のオフィスでは、対面ですぐに気づきを伝えられた」と都知木氏は話す。当時は同僚や上司が島型に机を並べ、隣に座る人が何をしているかがよく分かった。若手の電話対応に聞き耳を立てていて、対応が悪いと怒られるということも珍しくなかった。「こうした密接な人間関係が、日本企業の強さにつながっていたのではないか」(都知木氏)。
最先端のオフィスの設計を手掛ける同社は、いち早く1997年からフリーアドレスを採用。決まった社員同士が机を並べて作業をする環境ではなくなっていた。
しかも、営業や設計の担当者は工事現場にいることが多く、直行直帰を認めていた。このため、上司や部下、先輩と後輩といったコミュニケーションが希薄になっていた。
タブレットの中に上司
「生産性を高めるために、直行直帰のワークスタイルを推奨したい」「しかし、人間関係は濃密な時代に戻したい」。相反する課題を解決する手段として、コクヨファニチャーが注目したのがSNSだった。SNSにはオーシャンブリッジの「Zyncro」を採用。2011年夏に新規プロジェクトのメンバー10人で導入し、利用者を増やしていった。現在では社員1000人の3割が利用している。
同社の営業担当者はタブレットを持ち、社外から業務をこなす。SNSにはタブレットでアクセスする。「タブレットの中に上司がいる、というのがコンセプト」と都知木氏は強調する。
コクヨファニチャーはSNS以外にも複数の情報共有手段を用意している(図5)。電子メールや文書共有ツールとして、2012年7月に導入した「Google Apps for Business」を利用。Google Appsの一機能であるGoogleドライブでは契約書や規則といった全社員向けの文書を共有。営業日報などの公式な文書は2007年に開設したポータルサイトで共有する。