「冬のロシア。摂氏マイナス38度まで下がる北極圏で、当社の製品が使われていることが、センサーを活用することで分かった。今後、寒冷地向けに販売する製品には、ヒーターを付けることなどを検討したい」。
こう話すのは測量機メーカーのトプコンで、グローバル事業企画を担当する先村律雄氏だ。測量機とは、建設現場などで距離と角度を測定する機器のこと。同社製品は1000メートルの距離を4ミリメートル以内の誤差で測定できる精度を誇り、世界市場で約35%のシェアを占めている。
2位以下との差をさらに広げるため、トプコンが2012年7月に稼働させたのが「TSshield」システムだ(図1)。測量機にGPSと通信機器を搭載し、稼働状況をリアルタイムに管理。現在地や稼働時間、測量回数や温度などの情報をサーバーに送信して分析することで、故障の早期発見や修理の効率化につなげられるシステムだ。
センサーが生む「三方良し」
TSshieldは測量機のユーザーとトプコン、そして販売代理店の3者にメリットをもたらす。
ユーザーにとっては、故障で使えない時間を減らし、測量精度を正確に維持できる利点がある。背景には、測量機に多くのソフトウエアが実装されるのに比例して、故障の件数は増加傾向にあり、ユーザーが故障原因を特定するのが難しくなったことがある。
トプコンのサポート担当者がTSshieldを使い、稼働状況やトラブルの種類を把握することで、故障の解決にかかる時間を短縮できる。さらに、「遠隔地から機械を使用不能にする機能もあり、1台100万円以上する測量機の盗難防止にも役立つ」(先村氏)。
トプコンにとってのメリットは、冒頭のような実際の利用環境を把握し、商品企画に反映できるようになったことだ。「暑い地域で特定のエラーが頻発することが稼働データから判明すれば、次期商品の開発に生かせる。品質向上に欠かせない情報を収集できるようになった」と先村氏は話す。