ヤンマーは2013年1月、農業機械などを遠隔管理するM2Mシステム「SMARTASSIST」の販売を始めた(図1)。

図1● ヤンマーが提供する「SMARTASSIST」システム
大型のトラクターやコンバインにセンサーを装着(右下)し、稼働状況をクラウドに蓄積して把握する。稼働履歴などを分析することで、農作業の効率化を支援(左)。適切なメンテナンスを行い、故障予防にもつなげる。
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 システム開発を主導した浜田健二ICT推進部部長は、「農機を対象とするM2Mシステムは、国内初だ」と胸を張る。国内農機市場でクボタに次ぐ業界2位に甘んじるヤンマーが、システムを武器にシェア拡大を加速する。

 農機のエンジンやモーターには、既に多くの電子部品が使われている。燃料噴射量などをきめ細かく制御し、異常時には即座に運転手の注意を喚起する仕組みを備える。「だがこれまでは、作業が終わったら制御情報を捨てていた」と浜田部長は明かす。こうした情報を捨てずに生かそうというのが、SMARTASSISTの狙いだ。

 農機のエンジン回転数や排気の温度、レバーの操作回数などの稼働情報を、GPSを使った位置情報と組み合わせて収集。時系列で蓄積した後、携帯電話回線を利用してヤンマーのデータセンターに送信する。こうした情報を分析することで、故障の未然防止やダウンタイムの削減を実現できる。

 主要顧客である農家にとって、SMARTASSISTは大きな価値を持つ。いつどこで、どんな作業をしたかをシステムが自動的に記録するため、簡単に作業日誌を付けられるようになるからだ。1年前に種をまいた時期などを正確に把握すれば、農作業の効率化につなげられる。

建機や船舶にも展開

 ヤンマーにとっても、消耗品の販売や保守管理サービスを効率化できるというメリットがある。「トラクターの走行距離などを把握することで、適切なタイミングでメンテナンスを提案できるようになる。製品寿命を伸ばせれば、顧客の囲い込みが可能になる」と浜田部長はみる。

 ヤンマーは農機だけでなく、建設機械や小型船舶にもSMARTASSISTを展開していく。過去数年かけて、各製品の制御コントローラーを統一し、同じプロトコルで制御情報を蓄積できるようになったことが背景にある。2015年までに累積1万台に搭載し、稼働状況のデータを蓄積していく計画だ。「対応機器の台数を増やし、在庫管理や生産計画などにフィードバックしたい」と浜田部長は述べる。