「ビジネスルール」を管理し、業務アプリケーションから利用できるようにするBRMS(ビジネスルール管理システム)ソフトが注目されている。ビジネスのグローバル化や変化の速さに対応したいとする企業のニーズが高まっているからだ。日本IBMなどの主要ベンダーは、利便性の向上やBPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)との連携といった強化を急ぐ。

 BRMSソフトは、業務を進める際に守るべき規定や約束ごとを「もし…ならば~せよ」という形で表したビジネスルールを扱う製品だ。ルールを作成・保守したり、業務アプリケーションがルールに基づいて適切に処理を実行できるようにしたりする(図1)。

図1●BRMS(ビジネスルール管理システム)の概要
図1●BRMS(ビジネスルール管理システム)の概要
ビジネスルールを業務アプリケーションから独立させて管理し、変更が発生した際に素早い修整を可能にする

 多くのシステムでは、アプリケーションの中でビジネスルールを定義し、それに基づいて処理を実行している。ただ、ルールの数や種類が非常に多かったり、ルールを頻繁に変更したりする場合は、ルールをアプリケーションとは別に管理したほうが都合がよい。金融・保険における審査業務がその典型だ。これらの業務では複雑で多岐にわたる判定基準が必要になる。こうした分野でBRMSソフトは大きな効果が見込める。

製造業や官公庁に広げる

 現在、日本で入手できる主要なBRMSソフトは10製品ある()。日本IBMやレッドハット、日本オラクル、SAPジャパンといった大手を中心に、国内外のIT企業が製品を販売している。

表●主なBRMSソフト
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 今回取り上げたのは単体で販売している製品である。日本オラクルは「Oracle Policy Automation(OPA)」のほかに、ミドルウエア群「SOA Suite」などの一部として「Oracle Business Rules」を提供している。SAPジャパンも「NetWeaver Business Rules Management」に加えて、同社製アプリケーションで利用する「BRFplus」を用意している。

 どの製品もBRMSとして必要な機能は完備しており、現在各社が注力するのは使い勝手の向上やBPMとの連携などだ。日本IBMは2012年6月、「Operational Decision Manager(ODM)」に業務担当者向けの専用画面を追加。担当者自身がルールを作成・保守しやすくした。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)機能を使って、ルールを追加・変更した理由や注意点を共有できる。

 ODMは米IBMが買収した仏アイログの製品(旧製品名は「ILOG JRules」)で、IDC Japanの2011年調べでは国内で2割強のシェアを占める。

 BPM連携などの強化に積極的なのはレッドハットだ。2012年7月に出荷した新版「JBoss Enterprise BRMS 5.3」に、ビジネスプロセスを記述・管理するBPMや、リアルタイムのデータ処理を可能にするCEP(複合イベント処理)の機能を追加した。

 各社の狙いは使い勝手や機能の強化により、BRMSソフトのユーザー層や用途を広げることにある。最もBRMSが向くのは金融・保険業界だが、米フェア・アイザック(FICO)の「Blaze Advisor」を販売するFICO日本支社の村元洋カントリーマネージャーは「大手の銀行やカード会社の需要は一巡した」とみる。

 村元氏は「2013年は保険や製造業、官公庁を狙っていく」と話す。製造業はSCM(サプライチェーン管理)関連で、官公庁は法律や条例などの管理でBRMSソフトが威力を発揮すると予想する。

 IDC Japanによれば、2011年における国内BRMSソフト市場は8億6700万円で、規模はまだ小さい。しかし、ビジネスのグローバル化や変化への対応策として、BRMSソフトの導入機運が高まりそうだ。IDC Japanは、国内BRMSソフト市場は2016年まで年率10%程度で成長するとみる。

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