一般ユーザー向けで普及するSNSが、企業の情報共有手段の新たな選択肢に急浮上している。商談の進行や提案書などの情報をメンバー間で共有したり、特定の分野に詳しいメンバーを効率的に探し出したりすることでビジネスを支援する。大手ITベンダーは、企業向けSNSを業務ポータルに位置付けており、各社とも買収や機能強化に乗り出している。

 企業ユーザーが業務で本格的に使えるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が増えている()。米マイクロソフトは2012年にSNSの米ヤマーを買収。2013年3月には国内における「Yammer」のサポートを本格的に開始する。独SAPは2012年に人材管理サービスの米サクセスファクターズを傘下に収め、同社のSNSサービスを「SAP Jam」として強化している最中だ。

表●主な企業向けSNSサービス
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 企業向けSNSの画面の見た目は、「Facebook」などの一般向けサービスとほとんど変わりがない。例えば、利用者がコメントなどを書き込むタイムラインに対して、現在の業務の状況を入力したり、画像やファイルをアップロードして共有したりできる機能も同様だ。顧客などにもアカウントを発行することで、同僚だけでなく社外の関係者との情報共有の場にすることもできる。

 大きく異なるのが、蓄積している文書など情報の“変化”を把握するアラートの機能だ。ほとんどの企業向けSNSサービスは、プレゼンテーションや文書などのファイルをアップロードして、グループで共有したり、個人で利用したりすることができる。

 アラート機能はそうしたファイルを監視して、変更があった場合にユーザーのタイムラインにその旨を表示する。例えば、現在担当している企業に関連する商談やプレゼン資料に対してアラートを設定。変更があった場合には、商談に動きがあったことを察知できる。このほか「優秀な営業社員の資料をウオッチすることで、手法を学ぶことが可能」(セールスフォース・ドットコムの榎隆司執行役員)といった活用方法もある。

 こうした企業向けのSNSは大きく三つのグループに分けられる。一つめが主として単体での利用を想定したものである。二つめが、企業内で使うアプリケーションやサービスをつなぐためのハブとして提供するもの。三つめが、SNS機能をERP(統合基幹業務システム)などスイート製品の一部として位置付けているものだ。

 本記事では企業向けSNSの中から、単体でも契約が可能でサポートが受けられる有償版を用意するサービスを取り上げた。

目的の「人」を探しやすく

 日本IBMの「IBM Connections 4.0」は単体利用型である。2011年に投入したバージョンから、グループウエアの「Lotus」のブランドを外して“独り立ち”させた。

 Connectionsの特徴は、特定のスキルを身に付けていたり、関心を持っていたりする人材を探し出す機能にある。例えば、それぞれの利用者が、自分自身や他のユーザーに対して「クラウド」や「Connections」といった得意ジャンルの「タグ」を付け合う。画面上では多くタグが付いたジャンルの文字列が大きく表示される(図1)。特定のジャンルで、タグ付けが多い同僚を検索すれば、すぐに社内の専門家にたどりつけるわけだ。

図1●日本IBMの「IBM Connections 4.0」の画面
図1●日本IBMの「IBM Connections 4.0」の画面
ユーザー同士の「タグ付け」で、特定分野に詳しい人材や人物の 特徴などが分かる

 Connectionsは、IBM自身が全世界約40万人の従業員で利用している。「実際に使いながら、業務や共同作業に必要な機能を追加している」(日本IBM ソフトウェア事業Lotus事業部第一クライアント・テクニカル・プロフェッショナルズの松浦光部長)という。

 IBM Connectionsは、データセンターなどに自社でサーバーを設置するオンプレミス型と、サービスとして利用できるクラウド型の2種類の提供形態がある。現在はオンプレミス型のバージョンが「4.x」で、クラウド型の「3.x」に比べて先行しているが、将来的にはクラウド型を先行投入していく考えだ。

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