「“Nexus時代”のアプリケーション戦略(2)---4つの力を取り込むため大手ベンダーは戦略を調整」で見たように、大手ERPベンダーはこれまで、特定の業務・業種に特化した周辺アプリケーションでは買収を行ってきたものの、基本的には自社開発のスイート製品ですべての機能を提供する方向で成長してきた。ガートナーが実施した調査によれば日本の企業も、1社の製品で多くの業務をまかなうことが多かった。
ベストオブブリードの考え方が重要に
しかし今では、クラウドを中心とする4つの力やその結節点であるNexusを駆使する新興の「破壊的なベンダー」が成長しており、他社に先駆けて最新・最良の機能を使いたい企業が導入しつつある。これに伴って、分野ごとに最適なベンダーを選択するという「ベストオブブリード」の考え方が、改めて重要になってきている。
「“Nexus時代”のアプリケーション戦略(2)---4つの力を取り込むため大手ベンダーは戦略を調整」で触れたように、大手ベンダー自身も、以前にも増して、自社に足りない機能を積極的に大型買収で補完するようになった。その結果、特にクラウドについては、大手ベンダーの製品が、自社開発製品と買収したベンダーの製品が混在する、いわば「ベストオブブリード型スイート」になっている。
「買収により、スイート製品に新機能が追加されるのだから、スイート製品にすべて任せれば安心なのではないか」と考える人もいるかもしれないが、その際に注意すべきことがある。大手ベンダーが買収した新興ベンダーの製品は、既存のスイート製品と「ゆるやかに統合」されているに過ぎない。大手ベンダーのスイート製品に取り込まれた買収ベンダーの製品を導入するかどうかは、やはり、ベストオブブリード的なアプローチで、適切に判断し、統合していく必要がある。