「Nexus時代のアプリケーション戦略(1)---先行するコンシューマITの動向を重視せよ」で見たように「クラウド」「モバイル」「ソーシャル」「インフォメーション」という4つの力と、その結節点(強い結びつき)であるNexusに関しては、実はコンシューマITが先行してきた。
馴染みのない技術の提案に振り回される
コンシューマITが、エンタープライズITにもたらす影響は非常に大きい。まず、テクノロジ面では、コンシューマITで大きなトレンドが先行してきた新技術(クラウド、モバイル、ソーシャル、インフォメーションなど)を、エンタープライズITベンダーがこぞって取り込み始めている。
実際、各社はコンシューマITにその多くが由来する新技術を取り入れた新製品を続々と販売している。その結果、従来のエンタープライズITとは異なる、あまり馴染みのない技術・製品の提案攻勢に、ともすると企業のIT部門の担当者が振り回されてしまいかねない。
また、経済性に目を向けると、コンシューマITの価格は広告を原資にしていることが多く非常に安価または無料なので、一部がエンタープライズIT製品と競合し始めた結果、エンタープライズITにおいても価格下落圧力が強まっている。
無料または安価なサービスが一般的になってきたことから、企業の経営者も、従来のエンタープライズITの費用に対して疑問を持ち始めている。実際、極端な例としては、「クラウドを使ってコストを削減」という趣旨の記事を新聞や雑誌で読んだ経営者が、すでに着手されていた自社運用型の大規模パッケージ導入プロジェクトの費用見積もりに疑問を持ち、プロジェクトが頓挫してしまったケースもある。
コンシューマITは、エンドユーザーにも大きな影響を与えている。特に「デジタルネイティブ」と呼ばれる若い世代はコンシューマIT由来の新技術には日頃から慣れ親しんでいるので、会社で利用することにも全く抵抗がない。彼らにとっては、むしろ、従来のエンタープライズIT製品が使いずらいものと映ってしまう。
このため、「IT部門による導入・開発を待っていては遅い」とばかりに、エンドユーザー自らがSaaSなどの製品/サービスを導入したり、コンシューマITを業務で利用したりする動きも増えている。その結果、IT部門が管理していないアプリケーションを含むいわゆる“シャドーIT”が増える、という問題が起こっている。