日経コンピュータはパブリッククラウドの利用企業100社に、クラウドの利用方針や、クラウドの選択理由を質問した。73社の回答を基に、その動向を見よう。

 まずは、パブリッククラウドの利用方針だ(図A)。全体の14%が、「パブリッククラウドを全面的に活用する」という方針を回答した。クラウドを全面的に活用するという動きは日本でも特殊なケースではなくなってきた。

図A●パブリッククラウドの利用方針
図A●パブリッククラウドの利用方針

 それ以外のユーザー企業は、「条件が合う一部のシステムで、パブリッククラウドを活用する」を方針として挙げた。

 パブリッククラウドを選択した理由(図B)で最も多かったのは、「オンプレミスでも同等のシステムを実現できたが、クラウドの方がメリットが大きかった」というもの。「クラウドでしか入手できない機能/サービスがあった」という答えがそれに続いた。

図B●パブリッククラウドを選択した理由(複数回答)
図B●パブリッククラウドを選択した理由(複数回答)

ユーザーの期待は「コスト削減」

 「条件が合う一部のシステムで、パブリッククラウドを活用する」と答えたユーザー企業には、その条件を聞いた(図C)。

図C●パブリッククラウドを適用するシステムの条件(複数回答)
図C●パブリッククラウドを適用するシステムの条件(複数回答)
調査概要
パブリッククラウドの利用企業100社に対して、取材や調査票の送付を行い、クラウドの利用方針などについて73社から回答を得た

 最も多かった回答は「コスト削減効果が顕著なら、クラウドを利用する」である。

 続いて多かったのが「システム展開のスピードが必要なら、クラウドを利用する」という回答だ。近年、サービスを構築して修正するサイクルを素早く回し、試作を重ねながら改善する「リーンスタートアップ」に関心を持つユーザー企業が増えている。そのような企業にとって、クラウドが強い味方となっている。

 「クラウドでしか入手できない機能/サービスがあるなら、クラウドを利用する」との回答も多い。最近は、新しいアプリケーションが、パッケージではなくクラウドのサービスとしてのみ提供されるケースが増えている。今後、そうしたアプリケーションが増えるにつれ、「クラウドを選ばざるを得なかった」というユーザー企業は増えそうだ。

クラウド利用率は7割

 現在、ユーザー企業の何割程度が、パブリッククラウドを利用しているのだろうか。ここまで紹介した調査とは別に、「日経コンピュータ システム部長会」の会員を対象に、「パブリッククラウドの利用の有無」を問うミニアンケートも実施した。システム部長会に参加する300社以上のユーザー企業に調査票を送り、27社から回答を得た。

 システム部長会のアンケート結果では、パブリッククラウドを利用しているという回答が19件(70%)、利用していないという回答が8件(30%)だった。

 パブリッククラウドを利用しない8件の内訳を見ると、「条件が合う一部のシステムで、パブリッククラウドを活用する」という方針でありながら、条件に合ったクラウドが無いという回答が7件、「パブリッククラウドは原則、利用しない」という回答は1件だけだった。

 パブリッククラウドの活用は、ほとんどの企業にとって当たり前のものになったといえそうだ。