日本IBMの「IBM zEnterprise EC12」は、同社メインフレームの最上位機種である。従来の最上位機種「zEnterprise 196」と比べ、プロセッサ強化などにより、きょう体当たりの処理性能を50%、同じ消費電力で処理できる性能を65%、それぞれ向上させたとしている。
主な用途は、データベースを使った基幹業務アプリケーションを高信頼かつ高速に動作させることである。また、メインフレームOS(z/OS)のほかに、Linux(Red HatおよびSUSE)が動作する。したがって、企業内に分散しているLinuxサーバーを集約する用途にも利用できる。日本IBMによれば、メインフレーム上でLinuxを動かしているユーザーが増えているという。
さらに、オプションの拡張ユニット「IBM zEnterprise BladeCenter Extention(zBX)」を追加することで、オープン系サーバーとメインフレームを疎結合したハイブリッドシステムを構成できる。zBXは高さ42Uのラックで、多数のブレードサーバー(POWER 7搭載機とx86搭載機)を収容できる。10Gビット/秒イーサネットを介してメインフレーム本体と接続する。
zBXは、ブレードサーバーのほかに、SQLクエリー最適化装置やXSLT変換装置といったアクセラレータを搭載できる。これらアクセラレータは、メインフレーム上で動作しているアプリケーションからも利用でき、システム処理負荷をオフロードできる。
メインフレームとzBX内のブレードサーバーの各リソースは、システム運用管理ソフト「zEnterprise Unified Resource Manager(URM)」で統合管理できる。単一の画面から、メインフレームおよびブレードサーバー双方のハードウエア構成の変更、データのバックアップ/復元、システム稼働状況の監視、性能監視、保守管理(修理/交換ガイド)などができる。
性能面では、従来機種のzEnterprise 196と比べ、プロセッサ動作周波数が5.2GHzから5.5GHzに向上し、コア当たりの処理性能が1.25倍になり、きょう体に搭載できるプロセッサコア数が96コアから120コアに増加した。これらの強化によって、1秒当たりの最大命令処理数は、520億回(5万2000MIPS)から780億回(7万8000MIPS)へ約1.5倍になった。
このほか、各種ハード/ソフトを新たに搭載した。I/Oバスに接続してストレージの入出力処理を高速化するフラッシュメモリー「FLASH Express」、過去90日間分のログを分析して障害の兆候を検知するソフト「IBM zAware」、暗号処理カード「Crypto Express4S」などである。
プロセッサ | 64ビットz/Architecture CMOS(5.5GHz動作)、最大120コア |
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メモリー | 32G~3Tバイト |
チャネル(最大) | FICON Express8S×320 FICON Express8×176 FICON Express4×176 OSA-Express4S×96 OSA-Express3×96 |
OS | メインフレーム本体は、z/OS、z/VM、Linux(Red Hat、SUSE)、z/VSE、z/TPF |
拡張ユニットに収容するブレードサーバーは、AIX、Linux、Widnows Server | |
価格 | 最小構成で1億円前後 |
発表 | 2012年8月29日 |
出荷開始 | 2012年9月20日 |