前回述べたように、現状の企業ネットワークは、モバイルと仮想化の急速な普及に適応できなくなりつつある。そのためには新たな「論理的な面」を構築することが重要であることも述べた。

 企業の情報システム部門は、今すぐにでも、次世代の「ハイパーコンバージェンス・ネットワーク」(前回参照)の構築に着手するべきだが、「テクノロジが多すぎて、どこから手を付けたらいいのかわからない」という企業も多いだろう。

 そこで、提案したいのが、(1)クライアント側の視点(ユーザー視点)と、(2)サーバー側の視点(提供者側の視点)という、「2極分化」した2つの視点を持つことである。これにより、テクノロジを適切に整理・分類できるとともに、それぞれの視点でネットワークを最適化していくことができる。それによって、スムーズにハイパーコンバージェンス・ネットワークへと進化させることが可能になる。

ユーザーにアクセス場所やデバイスの違いを意識させない

 クライアント側の視点(ユーザー視点)では、アクセス場所(会社内や外出先、自宅など)やデバイスの種類(PC、タブレット、スマートフォンなど)にかかわらず、同じ手順、同じ環境でネットワークにアクセスできるようにすることが理想形だ。これを実現できるネットワークを目指すべきである。

 例えば、従来型のネットワークでは、社内PCでLANにつなげる手順と、社外からVPN経由でLANにつなげる手順は異なるのが普通だが、この差異を極力少ない手順にして、ユーザーにアクセス場所やデバイスの違いを意識させないようにできれば、使い勝手は飛躍的に高まる。

 これを実現するために必要な考え方は「ユーザー情報」で新たな論理面を構成することである。これからも多様化するであろう端末やアクセス手段を企業側の都合でコントロールするのはもはや難しい状況にある。そこで、企業活動に従事するユーザーにフォーカスをあてたネットワーク接続の管理が、今後ますます重要になると考える。

 一方、サーバー側の視点(提供者側の視点)では、データセンターのネットワークを、物理ネットワークとは切り離された論理面としてしっかり管理できるようにすることが最も重要である。そのうえで、サービスの安定性、高い性能、高信頼性を目指すべきだ。

 サーバー側の視点で特に重要なのは、L2の柔軟な拡張である。この拡張には2種類あって、物理的な拡張と論理的な拡張とに分けられる。スイッチド・ファブリックやイーサネット・ファブリックと呼ばれているテクノロジは、物理的なL2の拡張を助けてくれる。また、OpenFlowやOpen vSwitchなどのテクノロジは、論理的な拡張を助けてくれる。これらのテクノロジがデータセンターのようなサーバーが多く配備されるところで、新たな「論理的な面」を作るために貢献すると期待されている。

 企業ネットワークでは、実はもう一つ重要な視点がある。それは、電話などの音声ネットワークの視点だ。

 この音声ネットワークの視点も本来はクライアント側の視点、サーバー側の視点に含まれることにはなるが、コンピュータの導入よりも早くから企業で利用され、管理部門が異なったり、要求されるテクノロジの違いがまだ大きいことなどから、3つ目の視点として分けておくことが賢明な状況だ。この視点では、固定電話、携帯電話、IP-PBX、Web会議システム、TV会議システムなどを統合したユニファイド・コミュニケーションの構築を目指すことになる。

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