モバイルやクラウド、仮想化が、ITの定番キーワードとなって久しい。これらのテクノロジに関心が高まり徐々に導入され始めている。しかし、個別のテクノロジだけに目を向けて導入することには、大きな問題があると考える。それは、現状の企業ネットワークが、モバイルやクラウド、仮想化の普及に追いついていない問題だ。ネットワークが“置き去り”にされるリスクは非常に高まっている。企業は早急に、この問題の解決に着手するべきだ。

現状の「静的」なネットワークではモバイルや仮想化に適応できない

 従来型のIPネットワークの特徴は、通信相手のIPアドレスさえ分かれば、通信途中のことは何も考えなくても、トランスペアレント(透過的)に使えてしまう点だ。小規模のネットワークだろうが大規模のネットワークだろうが、基本的な知識とルールさえ分かれば、それらをつなげることは容易だった。

 従来型ネットワークの目的は、基本的にはルーターやスイッチで、PCやサーバーなどのデバイスをつなげることであり、つなげるもの(IPアドレス)が固定的に接続されあらかじめ分かっていることが、前提になっていた。

 ところが、モバイルと仮想化の時代になって、従来型ネットワークが想定していなかったこと起こり始めた。それは、「デバイスが、複数のネットワークを自由に動き回るようになった」ということだ。

 実際、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末が普及するに従い、無線LANや3G回線、インターネット、VPNなど、ネットワークの種類が多様化するとともに、同じデバイスがそれらのネットワークを自由に切り替えて利用するようになった。サーバーに目を移しても、サーバー仮想化により、仮想サーバーがハードウエアから独立して、物理サーバー間を自由に移動するようになった。

 こうした変化に対し、極論すれば「IPアドレスを払い出す」ことでクライアントやサーバーをつなげてきた従来の「静的」なネットワークは、うまく適応できない。元々、モバイルや仮想化を前提として作られていないからだ。変化に適応するためには、「そもそもネットワークとは何か」という基本に立ち返る必要がある。

 「ネットワーク」という言葉は、得てして、「ネットワークの機器構成や運用」を指す言葉として使われがちだが、本来は、クライアントやサーバーといった「ITの構成要素をつなげる」ことが目的である。デバイスがどこにあって、どんなネットワークを使っていても、効果的につなげることが、本来のネットワークの役割である。

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