Oracle、SQL Server、MySQL――。クラウドサービスとして利用できる「クラウドRDB」が出そろった。使い慣れたRDB(リレーショナルデータベース)と同様の技術や言語を利用できる。クラウド上で業務システムを開発する企業に、有力な選択肢となりそうだ。拡張性や開発生産性の高さといったクラウドならではの特徴を、さらに強化する動きも進んでいる。
「RDBソフトをクラウドサービスとして、必要に応じて利用できるようになる利点は大きい。社内にあるオンプレミスのシステムとクラウド上のシステムを組み合わせたハイブリッドクラウドを構築する、有力な選択肢になるだろう」。日立ソリューションズの酒井達明 技術開発本部生産技術センタ アドバンスドITアーキテクトは、クラウドRDBのメリットをこう評価する。
米オラクルと米グーグルが、10月初めにクラウドRDBの試用版を公開した。米セールスフォース・ドットコムと米アマゾン・ウェブ・サービス、米マイクロソフトの大手3社も、既にクラウドRDBサービスを提供済みだ(表)。一方、米IBMは現在のところクラウドRDBを提供する計画はないとしている。
「従量課金」でRDBを利用
クラウドRDBの最大の特徴は、ユーザー企業が慣れ親しんだRDBを、サービスとして利用できるようになることだ。データベースの容量や割り当てる処理能力などは、ユーザー企業が簡単な操作で増減できる。データのバックアップやセキュリティ修正パッチの適用といった運用保守作業は、全てクラウド事業者が担う。
利用料金は、使った分だけ支払う従量課金制だ。具体的な課金単位や料金はサービスごとに異なるが、データベースの数や利用時間、データ件数、データ容量、アクセス件数、利用者数などに応じる。データ量が急増したり処理負荷が大きく変動したりするシステムの運用に向く。初期費用を支払って導入するRDBソフトと違って、利用実態に応じた料金でシステムを運用できる。
これまでクラウド上で提供されるデータベースは、「NoSQL」などと呼ばれる、RDBではない製品が主流だった。NoSQLは分散・並列処理に強い半面、RDBとは設計・開発手法が大きく異なる。社内にあるRDBを連携させるハイブリッドクラウドを開発するには、NoSQL用の技術を新たに習得する必要があった。
クラウドRDBが充実することで、ユーザー企業がハイブリッドクラウドを構築するハードルは下がる。クラウド側で動かすシステムを、RDBの技術を基に開発・運用できるようになるからだ。多くのクラウドRDBが標準的なデータベース操作言語のSQLを使い、データベースの検索や更新といった処理を実行できる。
アプリケーション開発のプログラミング言語や、データベース内で処理ロジックを実行する「ストアドプロシージャ」の記述言語なども、RDBソフトと同じものを使える。データベースの論理設計(データモデル定義、テーブル間の関係定義)や物理設計(インデックス定義、データベース容量の設定)などについても、おおむねRDBソフトと同様に実行できる。