前回は、IT製品(ソフトウエアパッケージ、ハードウエア、クラウドサービスなど)を正しく選定することの重要性について述べた。今回は、製品選定の際の基本的考え方について述べてみたい。
中長期的な視点でIT都市計画を策定しよう
なじみのSIerや大手ITベンダーのお勧め通りに製品を選択したり、最安値の製品を選択したりすることの愚かさは誰でも分かっている。しかし、どのような考え方で選択すれば良いのかがよく分からない、という人は多い。筆者も職業柄、そのような質問をユーザー企業のIT部門の方々から受けることが多い。そのような場合、「都市計画と同じように考えましょう」と答えるようにしている(図1)。

近代の都市計画では、幹線道路や鉄道網などの都市インフラを長期的な視野で整備し、文教地区、商業地区、居住地区などを計画的に配置する。その際、都市計画法や建築基準法などの強制力のある法律、自治体の建築基準条例のようなローカルルール、コミュニティが策定した住宅外観指針のような緩やかなガイドライン、などの種々のルールや指針が必要となる。
実際に都市計画を推進する場合、すでに存在する建築物をすべて撤去し新しく建て直すことは非現実的であり、既存建物の廃棄と新規建築のバランスを取って進めていくのが一般的である。また、新規建築物に対するルールも、敷地面積や天井の高さなどの詳細な仕様を厳密に標準化するのではなく、建物の色合い、建物の高さなど、都市全体との整合性を配慮した緩やかなものが基本となる。
企業ITも都市計画と同じように、自社にとっての“IT都市計画”なるものを中長期的観点で策定し、その計画を推進するための最小限のルールやガイドラインを制定するべきである。グローバル競争、業界再編、顧客ニーズの変化、革新的技術/商品の台頭など、市場環境変化が非常に激しい現代ビジネスにおいては、変化の先を見越したITの計画的配備が非常に重要となる。