今回から数回に渡り、主にユーザー企業の情報システム部門向けに、IT製品およびベンダーの選び方について解説を行う。

 第1回は、製品選定の重要性について述べる。ここでの「製品」とは、IT製品のことであり、ハードウエア、パッケージソフトウエア、サービスなどITベンダーから販売されているIT製品全般のことを指している。

製品選定が正しく行えないと、システムがサイロ化する

 「製品選定が重要なんて、当たり前のことじゃないか」と感じた読者は、ぜひ図1のチェックリストを試していただきたい。

図1●ユーザー企業における製品選定の成熟度チェックリスト
図1●ユーザー企業における製品選定の成熟度チェックリスト

 5つ以上チェックがついた場合、その企業の製品選定は適切に行われておらず、システムのサイロ化が進んでおり、維持コストが過度にかかっている可能性が高い。8つ以上にチェックがついた場合、その企業の製品選定方針や思想はないに等しく、SIerの言いなりで製品選定を行っている可能性が高い。

 図1のリストで、多くの項目にチェックがついた企業は意外に多いのではないかと想像するが、それは製品選定の重要性を正しく認識していないことに原因がある。製品選定が正しく行えないユーザー企業には、以下に示した問題が発生する。

  • システム・サイロ化が進行し、総コストの膨張につながる
  • バックアップやシステム連携など、システム横断型処理が個別に行われ、運用コストの膨張につながる
  • 新規事業やM&Aといったビジネス環境の変化に俊敏かつ柔軟に適応することが困難で、ビジネス推進の足かせとなる

 まず、同等の機能を有する製品が複数乱立した結果、企業システムの全体最適化とは真逆の方向で、秩序に欠けた分散化が進行するという、いわゆる「システム・サイロ化」が進んでいく。個々のシステムの運用保守にコストがかかるため、企業システムのトータル・コストは肥大化するのである。

 企業システムには、バックアップやシステム連携など、複数のシステムに共通する処理も多い。このような処理は統合を行うことにより、作業効率が向上し運用コストの低減も実現できるのだが、システム・サイロ化が進んでいる場合、統合化は容易ではない。

 最も大きな問題は、現在の経営者の悩みや要望に応える企業システムを実現することが困難になることである。グローバル競争がますます激しくなっている現在においては、新規事業やM&Aといったビジネス環境の変化に企業システムは、俊敏かつ柔軟に適応することを求められている。しかし、サイロ化が進んだ企業システムではこのような対応は非常に困難であり、「企業システムがビジネス推進の足かせとなっている」と指摘されるユーザー企業は少なくない。

この先は日経クロステック Active会員の登録が必要です

日経クロステック Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。