通信インフラの最後のポイントは、(3)「他センターへの移行性」についてだ(1の「センター内の冗長性」と2の「アクセス回線の冗長性」は前回を参照)。これは、被災したり、停電で使えなくなったりしたときの対策である。具体的には、自社のサーバーのバックアップを別の場所に簡便に移行できるかどうかのことだ。

 スタンダードな移行の仕方として、実際に運用しているプライマリーのサーバーとは別にバックアップサーバーをデータセンターで運用しておき、プライマリーサーバーで障害が起こった際に自動でバックアップサーバーにアクセスを切り替える、という方法がある。非常時には他のセンターに移行するのだ。

 国内に複数のデータセンターを構え、センター間でバックアップサービスを提供する事業者もある。例えば、IDCフロンティアの「データセンター間接続サービス」と「マネージドGSLBサービス」を利用することで、プライマリーサーバーとバックアップサーバーの同期を取りつつ、プライマリーサーバーで障害が起こったときに速やかにバックアップサーバーに通信を振り分けることができる。マネージドGSLBサービスは、DNSと広域サーバー負荷分散(Global Server Load Balancing)を使った仕組みだ。

仮想化によるデータ移行

 一方、最近では仮想化技術を使ってプライベートクラウドを自社運用する企業もある。サーバーの仮想化は元々はサーバー統合で導入するケースが多いが、仮想化したサーバー(仮想マシン)は物理的なサーバーと違い、移行しやすいという利点がある。

図4-1●vCloud Datacenterでプライベートクラウドからパブリッククラウドへ移行
ヴイエムウェアから認定を受けたプロバイダー間でも仮想マシンを連携できる。
[画像のクリックで拡大表示]

 そこで仮想マシンを別のデータセンターに移行できることを保証するクラウドサービスが出てきた。ソフトバンクテレコムが2011年7月に開始した「VMware vCloud Datacenter Services」(以下、vColud Datacenter)だ(図4-1)。vCloud Datacenterは、ヴイエムウェアの仮想化ソフトをインフラとして提供するIaaSである。ユーザー企業が運用しているプライベートクラウドの仮想マシンを、IaaS事業者が提供するvCloud Datacenter上で稼働することを保証するものだ。管理画面からの操作で簡単に移行できるとしている。