2004年末および2005年初頭に,シャープとソニーの2社が相次ぎ「ネットワーク・メディア・プレーヤ」と呼ばれる種類の製品を発表した。そこで登場した共通のキーワードが「DLNA」だ。DLNAは,2005年の注目技術の一つといえる。今回は,このDLNAについて探ってみる。

 DLNAとは,「Digital Living Network Alliance」の略で,ホーム・ネットワークでディジタルAV機器同士やパソコンを相互に接続し,動画,音楽,静止画像のデータを相互利用する仕様を策定するために設立された業界団体。マイクロソフト,インテル,松下電器産業,ソニーといった企業が参加している。

 冒頭で見た「DLNA」というキーワードは,DLNAが2004年6月に定めた最初の仕様である「相互接続ガイドライン1.0」(DLNAガイドライン)を指す。2004年10月に開催された展示会「CEATEC JAPAN 2004」では,ディジタルAV機器とパソコンを相互接続して動画などのコンテンツをホーム・ネットワーク経由で再生するデモを見せ,来場者の注目を集めた。

 DLNAガイドラインは,コンテンツを提供するサーバーをDMS(digital media server),再生するクライアントをDMP(digital media player)と呼び,DMSとDMPの間の接続条件を定めたものである。このガイドラインに準拠した機器同士なら,単に線をつなぐだけで特別な設定なしに相互接続してコンテンツを共用できるようになる。

 ただし,DLNAガイドラインは,新しいプロトコルを一から開発したものではない。すでにある標準規格や汎用のプロトコルを組み合わせて作られている。

 例えば,伝送規格はイーサネットかIEEE802.11無線LANを利用する。通信プロトコルはTCP/IP。制御メッセージの交換やファイル転送にはHTTP(hypertext transfer protocol)を使い,メッセージはXML(extensible markup language)で記述する。動画のデータ形式はMPEG2で,静止画はJPEGに対応する。

 そのDLNAガイドラインで中核になっている技術が,UPnP(universal plug and play)である。DMSやDMPにアドレスを割り当てたり,自動認識する部分にはUPnP Device Architectureで規定されたプロトコルを使う。持っているファイルの一覧情報を提供し,データを送り出すDMSにはUPnP Media Serverの仕様を使うといった具合だ。

 つまりDLNAガイドラインとは,UPnPを中核に据え,相互接続のために最低限サポートすべき仕様だけを整理して規定したものである。

 パソコンやハードディスク・レコーダに格納された動画や音楽ファイルにLAN経由でアクセスして再生する「ネットワーク・メディア・プレーヤ」はすでにあった。ただし,こうした製品は既存のプロトコルを独自に組み合わせて採用しているケースが多い。それに対してDLNAガイドラインは,多くのメーカーが策定に参加した共通仕様である。DLNAガイドラインの意義は,技術そのものではなく,「共通仕様」だという点にある。

 シャープとソニーがDLNAガイドライン対応のネットワーク・メディア・プレーヤを発表したことで,他の家電メーカーも対応機器を出してくることになるだろう。

山田 剛良