スマートファクトリーの実現を阻む課題
AIやIoTをはじめとするデジタルテクノロジーをビジネスに活用する機運が高まりを見せている。中でも一際大きな期待を寄せているのが製造業だ。
製造業は以前から産業ロボットの導入を進め、生産工程の効率化などを進めてきた。人に代わって作業を行う産業ロボットを「手足」とするなら、IoTは「目」、AIは「頭脳」のようなもの。機械が目と頭脳を手に入れることで、工場はより自律的な稼働が可能になり、いわゆる「スマートファクトリー」という高効率生産の工場を実現できる。
しかし、導入ではつまずくことも多いようだ。
例えば、AIの1つである機械学習を不良品検知や予知保全に役立てようという構想を描く企業は多い。機械学習は、教師データといわれる「教材」を大量に学習し、それを繰り返すことで、判定の精度を高めていくわけだが、同じ製造業の中でも、工場やラインによって作るものも違えば、工法や材質も違う。学習作業は一筋縄ではいかない。
また、日本の製造業は非常に優秀で不良品の数が限りなく少ない。そのため、不良品のサンプルデータが少なく、「何が不良であるのか」をAIに学習させるのが難しいという実態も浮き彫りになってきている。
さらにAIに学習させるデータの意味付け、分析モデルを構築するデータサイエンティストの存在も課題だ。ものづくりを本業とする製造業で、そうした人材を社内に抱えている企業はほとんどない。
このように、IoTやAIを活用したスマートファクトリーの実現に向けた機運は高まっているものの、製造業の多くは、いまだ、様々な壁にぶつかっている。
しかし、様々な技術革新や工夫によって、それを克服するケースも出始めてきた。NECと工作機械メーカー大手オークマの共創による取り組みがその1つだ。
両社はいかにして難題を克服したのか。そして、実現したソリューションとは。次頁以降で、両社の取り組みをひも解き、製造業におけるAI活用の最前線を考察していく。