RPAやAIの活用は民間企業だけでなく、自治体にとっても重要なテーマだ。その現状や課題について、日経BP社が開催した会合「都道府県CIOフォーラム(2018年2月6~7日)」での講演や発言から明らかにする。
2日目午前のテーマは、行政サービス・行政事務でのAIおよびデータの活用。初めにAI活用で先行する大阪市と徳島県が取り組み状況を報告し、質疑応答を行った。
大阪市の田畑龍生CIO/ICT戦略室長に対しては、ITベンダーとの契約に関する質問があった。大阪府総務部の蓮池忍IT・業務改革課長は「ベンダーの選定は既存システムと関係があるか」と尋ねた。田畑氏は「既存システムとは無関係。入札金額が1000万円で、データクレンジングや技術者派遣も含まれた契約内容を評価した結果だ」と説明した。
横浜市の福田次郎CIO補佐監は「整備後のデータの著作権は自治体が主張してほしい。ベンダーロックなしで仕様を公開でき、自治体同士での横展開も期待できる」と提案。田畑氏は「戸籍業務は横展開しやすい。権利関係は、今後クリアにしていきたい」と回答した。
観光、児相、問い合わせにAI
徳島県の山住健治情報セキュリティ担当室長には、要約サービスの精度に関する質問があった。都道府県CIOフォーラム会長で司会の北海道総合政策部の村上順一情報統計局長は、「満足度93%は実用レベルだと思う。音声はマイクで拾っているのか」と尋ねた。山住氏は「知事の発言は備え付けのマイクで集音している。Google音声認識は精度が高いうえに、現場で職員がリアルタイムで修正している」と説明した。
ディスカッションでは、AI活用の取り組みについて、さまざまな意見が交わされた。奈良県の二見氏は、「AI音声認識による議事録作成システムを予算要求したが、職員端末の性能が足りずAI系が動かないことが判明した。ハードの追加購入を考えている」と現状を説明。広島県の桑原氏は、「AIやRPAは2018年度下期から実証を始める。IoTやAIの利活用に関してソフトバンクと2018年1月に包括連携協定を結んだ。道路や駐車場の混雑状況など、観光客への情報提供を考えている」と報告した。
児童相談記録の解析にAIの活用を検討しているのが兵庫県。5つの児童相談所、約100人の児童福祉司で虐待などの相談・通告に対応している。2016年度は2600件のインシデントがあり、130人を一時保護した。木村紀雄情報企画課長は「案件は増えているが、ベテラン職員が減っている。最長2カ月の保護期間の後、施設・里親・親元のどこに戻すか、医師や弁護士も招いた会議で判定する。親元に帰した後に虐待が再発するケースもある。7年前に児童相談支援システムを導入しデータは蓄積されているので、分析して再発の特徴を見つけたい」と説明した。
行政でのAI活用を推進中の埼玉県は、2018年度からチャットボットを庁内の問い合わせ業務に適用する。「事前に整理しないと精度の高い答えは出ないので、FAQのクレンジングや学習過程の整備を進める。庁内で適用分野のアイデアを募っており、実装可能性を評価していく」(企画財政部の山口均参与)。