「ITインフラSummit 2018 夏」の特別講演に、コインランドリー事業を手がけるアクアの秋馬誠氏が登壇。2005年から稼働しているIoTランドリーシステムを、Azureベースの次世代システムに刷新した経緯を、同社のIoTランドリーシステムの概要と共に説明した。

アクア マーケティング本部コマーシャルランドリー企画グループディレクター 秋馬 誠氏(撮影:海老名 進)
アクア マーケティング本部コマーシャルランドリー企画グループディレクター 秋馬 誠氏(撮影:海老名 進)

 秋馬氏によると、コインランドリーの店舗は増え続けており、2015年の時点で約1万7500店舗に達した。この背景には、ユーザーの清潔志向の高まりや、クリーニングよりも安いといった特徴があるという。店舗開発も進み、カフェやペットサロンを併設した店もある。

 アクアも、2005年からコインランドリーをIoT化した。「店舗に行かなくても、コインランドリーの空き状況が分かる」(秋馬氏)ことを売りとしたシステムである。2017年末には、このシステムをクラウドベースの「AQUA次世代Cloud IoTランドリーシステム」へと刷新した。

 現在、1800店舗計2万3000台のランドリー機器が同システムのネットワークにつながっている。顧客は、スマートフォンやパソコンのWebサイトから、洗濯機や乾燥機の空き状況を確認したり、洗濯が終わったという通知を受け取ったりできる。

 直近では、ファミリーマートと提携し、コンビニエンスストアとコインランドリーを融合させた新型店舗も2店舗オープンした。コンビニとコインランドリーを自由に行き来できるほか、相互に割引クーポンを発行したり、ポイントシステムを連携させたりなどして、相乗効果を高めている。

OracleからSQL Serverへの移行に苦労

 今回のシステム刷新は、3つのフェーズに分けて進めている。2017年までの第1フェーズでは、IoTランドリーに加えて、ICカードの発行やチャージ、クーポンの発行などができるマルチ端末を店舗に導入した。「雨の日」や「空いている時間帯」に遠隔でクーポンを発行して料金を割り引くといった販促ができるようになった。

 2018~2019年にかけての第2フェーズでは、API連携によって異業種間のシステム連携を実現する。異業種間でポイントや会員サービスなどを共通化できるようになる。2020~2021年に予定する第3フェーズでは、「利用履歴や稼働状況など、クラウド上に蓄積したビッグデータを活用した新しいビジネスを始める」(秋馬氏)。

 IoTシステムをクラウド化するにあたって、同社はまず、オンプレミスシステムを刷新した。具体的には、LinuxとOracle Databaseを中心としたシステムを、WindowsとAzure SQL Databaseを中心とした構成へと作り替えた。

 秋馬氏は、開発で苦労した点として、Oracle DatabaseからSQL Serverへの移行作業を挙げる。データベース側で動作するロジックであるストアドプロシージャ(STP)のコードを修正する必要があったが、PL/SQL(Oracle Database用)のコードをTransact-SQL(SQL Server用)に修正する作業が大変だったという。

 Azure上では、システムを動作させる仮想サーバーやSQL Serverに加え、IoTデバイスの管理とメッセージの送受信を担うサービスとして、Azure IoT Hubを導入した。Azure IoT Hubで受け取ったデータをリアルタイムに処理するためのストリームデータ処理基盤としては、Azure Event Hubsも使っている。