システム開発に占めるテスト工数の割合は大きい。特に稼働中のシステムに対して機能の追加や変更をする「エンハンス開発」では、古い機能が積み重なり、テスト対象が雪だるま式に大きくなる。開発工数の半分近くがテストに費やされているという現場も珍しくない。テスト工数が足を引っ張ってスピーディーな機能追加ができなくなると、システムの競争力を落としてしまう恐れもある。今こそソフトウエアテストの無駄取りで効率化しよう。

 人工知能(AI)にソフトウエアテストの面倒な作業を任せる――。そうした取り組みが始まっている。スタートアップ企業のTRIDENTはAIを活用してスマートフォンアプリの機能テストを自動化するクラウドサービス「Magic Pod」を提供中だ。ベータ版を2017年7月に公開して、ソフトウエアテスト専業ベンチャーのテスター・ラボなど50社以上で採用されているという。正式版の提供は2018年内を計画している。

 Magic Podが効率化するのは、テストを自動化するテストスクリプトの作成と保守だ。「従来はテストスクリプトをプログラムとして記述する必要があった。プログラミングスキルがないと作成や保守が難しかった」(TRIDENTの伊藤 望社長)。フォームやボタンの名称はプログラミング用の名前が用いられるし、クリックや入力といった操作はメソッドと引数、パラメーター指定といった具合で書く。

 Magic Podはプログラミングではなく、マウス操作でテスト自動化のテストスクリプトを作成できるのが特徴だ。次の3ステップでテストスクリプトを作成できる。

 STEP1ではスマートフォンのアプリ画面をキャプチャーして、MagicPodのクラウドに画像を取り込む。自動的にAIを利用した画像解析が行われ、画面内のボタンや入力フォーム、アイコン、文字列を識別して自動抽出する。さらにAIによる文字認識も実行して、ボタンや入力フォームに対してテストスクリプトで使う名称を自動付与する。名称は後から自由に編集できる。

AIでテストスクリプト作成を支援する「Magic Pod」
AIでテストスクリプト作成を支援する「Magic Pod」
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 STEP2ではテストスクリプトを作成する。Magic Podでは右側にスマートフォンアプリの画面、左側にテストスクリプトの作成画面を表示する。右のアプリ画面にあるボタンや入力フォームといった画面の構成要素を、左のテストスクリプト作成画面にドラッグ&ドロップしてテストスクリプトを作成する。要素の種別に応じた操作や文字入力を指定して、一連の実施したい動作手順を作成できたらこの作業は完了だ。

AIでテストスクリプト作成を支援する「Magic Pod」
AIでテストスクリプト作成を支援する「Magic Pod」
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 STEP3ではテストスクリプトを実行する。最終的に完成したテストスクリプトは「[名前入力エリア]に[○×]と[テキスト入力]」といった具合で、プログラマ以外にも分かりやすい形式となる。画面下の実行ボタンを押せば、そのテストスクリプトを自動実行する。複数のテストスクリプトをまとめて実行する機能もある。

AIでテストスクリプト作成を支援する「Magic Pod」
AIでテストスクリプト作成を支援する「Magic Pod」
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 TRIDENTの伊藤社長は「テストスクリプトをテストケースと同様の自然な言葉で表現し、直感的な操作で作成したり変更したりできるようにしたかった。プログラマ経験がなくても、テストスクリプトを作成して保守できるはずだ」と話す。現在はWebアプリケーションもテストできるようにすべく、サービスの機能強化を進めている。

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