インターネットには多くのWebサイトが存在し、多種多様なコンテンツを公開している。そうしたWebサイトの中には、各国の法律に照らし合わせると違法なものもある。例えば、著作権に違反して商用コンテンツを無断で公開する、いわゆる海賊版サイトや、児童ポルノをはじめとするアダルトサイト、違法薬物の取引を仲介するサイトなどだ。
こうした違法なWebサイトには本来、法律にのっとって個別に対処する。例えば、海賊版サイトに対しては、著作権者が差し止め請求や損害賠償請求といった民事上の措置を取ったり、刑事告訴したりする必要がある。
ただ、こうした法的な措置には煩雑な手続きが必要で、時間もかかる。その間、著作権を侵害したコンテンツは公開されたままだ。そこで、ネットワーク技術を利用して、ユーザーが違法なWebサイトにアクセスできないようにする方法が注目を集めている。これが「サイトブロッキング」だ。
サイトブロッキングはISP(Internet Service Provider)が主に実施する。ユーザーがインターネットに接続する際には、ISPを経由するのが一般的だからだ。
どのWebサイトが違法かをISPが知っていれば、そうしたWebサイトにユーザーがアクセスしようとしたときに、何らかの手段を使ってアクセスをブロックできる。
ブロッキングが違法である可能性
しかし、ISPがサイトブロッキングを実施することが法律面で許されるかどうかは見解が分かれている。日本のISPには、憲法や法律により「検閲の禁止」と「通信の秘密の保護」が義務付けられているからだ。最高法規である日本国憲法とISPが守るべき電気通信事業法の両方にこれらが規定されている。
ISPがサイトブロッキングを実施する際には、ユーザーがどのWebサイトにアクセスしようとしているかを、Webサーバーのホスト名やIPアドレス、URLなどをチェックして知る必要がある。
一方、「ユーザーがアクセスしようとしているWebサイト」という情報自体が「通信の秘密」の1つである。それをISPがチェックすることは、通信の秘密の侵害に相当する可能性がある。