会社のITシステムが使いにくければ、生産性は上がらず、働き方改革など不可能だ。SEは今、操作性に優れたユーザーインタフェース(UI)を備えたシステムの開発スキルが求められている。そのノウハウに迫る。
UI(ユーザーインターフェース)デザインのポイントをSEが習得するだけでも、相当なスキルアップ。だがまだ満足するのは早い。次は、UX(ユーザーエクスペリエンス)について習得しよう。企業のITシステムにも、エンドユーザーの利用経験を重視するUXの考え方が必要になっている。早速ポイントを見ていこう。
UXデザインのポイント(1)
ユーザーの観察やインタビューから始めよう
UXと聞くと「デザイン思考などの方法論を使わなければならず、難しそう」と考えるITエンジニアが多いかもしれない。確かにデザイナーが実践する全ての方法をITエンジニアが実行するのは難しいかもしれないが、UXのエッセンスを取り入れることは可能だ。
UXを実践するための出発点となるのが観察やインタビューだ。実際に利用者が使っているシーンを自分の目で見たり、話しを聞いたりすることがユーザーを理解する第一歩となる。観察であれば専門知識がなくても、すぐに実行できそうだ。
「体験可能なものは実際に自分が顧客になるなど、できるだけ利用者の気持ちに近づいたほうがいい」とNTTデータの宇津木シニア・エキスパートは話す。銀行の窓口システムであれば銀行に顧客として訪れる、物流システムであればその会社の物流サービスを利用してみる、といった具合だ。
観察の成果物の1つが、利用者の立場に立って利用シーンを記載した「カスタマージャーニーマップ」などと呼ばれる文書だ。イラストなどを使って、顧客の気持ちなどを記述していくのが一般的だ。
しかし企業システムの場合は、気持ちなどを書き込むのは難しいケースもある。そうした際には、「該当システムを利用した業務のシナリオを作成する」(TISの香川エキスパート)ことがお勧めだ。業務シナリオは「どういう時に使われるのか」「前の業務は何か」など業務視点から利用の流れを記述する。
実際のプロジェクトでUXの向上に関する取り組みを行うとしたら、どのタイミングが適切なのか。「できれば要件定義前の企画段階。遅くても要件定義で同時に実施したい」とNTTデータの宇津木 シニア・エキスパートは話す。
デザイナーが実施する場合、UXのデザインプロセスでは要件は定義しないが、UIデザインの規約や画面定義などを成果物として作成する。ITエンジニアが行う場合も、こうした点を意識して設計の前に試してみよう。