広告はここ数年で、「どれだけ広く見られているか」よりも、「どれだけ“きちんと”見られているか」が重視されるようになってきた。“きちんと”という言葉には「マーケティング上、対象となるユーザーに見られている」だけではなく「そもそも閲覧可能な形で表示されているか」という視点までを含んでいる。

 この視点をデジタル広告の分野では「ビューアビリティ(Viewability)」と呼ぶ。「ユーザーが訪問したWebページなどに配信された広告のうち、実際にユーザーが閲覧できる状態にあったと考えられる広告表示の割合」として指標化している。

 背景には、「アドフラウド(ボットなどで無効なクリックやインプレッションを生み出す行為)」などの不正の横行がある。さらに閲覧できるよう配信された広告を、ユーザー側で意図的にブロックする「アドブロッキング」も広く普及している。GlobalWebIndexは「全世界のインターネットユーザーの47%がアドブロッキングを利用している」という調査結果を公開している(編集部注:調査結果は個人情報の入力後にダウンロードできる)。

 この結果、広告主企業は広告について「きちんと人間が閲覧しているのか」を意識しなくてはならなくなった。ビューアビリティが重要になったのはこういう理由からだ。

 こうした動きの影響からか、ビューアビリティをテレビ広告にも適用しようという動きが活発になっている。広告代理店やメディア関連企業が、テレビ広告のビューアビリティの定義について試行錯誤を繰り返しているのだ。

 テレビ広告のビューアビリティに関わる数字も明らかになった。米広告代理店Interpublic GroupのIPG Media Labは2019年3月19日、独自調査結果を基に「テレビ広告のビューアビリティが71%である」という推計を発表した(編集部注:調査結果は個人情報の入力後にダウンロードできる)。

 この調査は、米国の業界団体Media Rating Council(MRC)がインターネット上の動画広告のために決めた定義を前提としている。つまり「広告スペースの50%以上が2秒以上表示されている」というものだ。

 上記の定義をテレビ広告に当てはめるため、調査では米国在住の5000人以上の消費者に半年かけて「広告の放映時に2秒以上部屋にいたか」または「2秒以上広告を見ていたか」を聞いたという。この結果として、テレビ広告の29%は「誰もいない部屋に表示されている」または「人がいる部屋に表示されたものの、2秒以上は見られていない」という実態が見えてきた。

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