新電力として電気を売るにはどうしたらよいのか。実は電気の販売方法には、コストやリスクの度合いによって複数の方法がある。新規参入する際に何より大切なのはパートナー企業の選び方。必ずチェックすべき10カ条とは。

 電力全面自由化から4回目の春を迎えた。「自由化の認知度が低い」「ちょっとした値引きでは消費者は動かない」などと言われた時期もあったが、フタを開けてみれば、自由化先進国と言われる英国と同ペースで電力会社の切り替えが進んでいる。

 2018年12月に経済産業省が公表した「電力取引報」によれば、2018年9月時点で電力会社の切り替えをした家庭は約1284万件、スイッチング率は20.5%を超えた。この数値には、大手電力会社の規制料金から自由化後に投入したメニューへの切り替えを含んでいるため、低めの評価をする見方もあるだろう。だが、大手電力から新電力に切り替えた家庭は約795万件、12.7%に上る。

 60年の長きにわたる大手電力による地域独占は崩れ、大手電力が新電力に奪われた顧客の巻き返しに本腰を入れるようになった。さらに、自社の顧客の減少を受けて発電所を停止する動きを見せ始めている。

 自由化は着実に進展している。そして、消費者にも少しずつ「電気は選ぶもの」という意識が芽生えている。

短期間で数百億円の売上高も難しくない新電力事業

 新電力向けに需給管理などのコンサルティングを手掛けるAnPrenergy(アンプレナジー、東京都港区)の村谷敬代表は「新電力はやりようによっては数百億円の売上高を短期間で作ることができる魅力的な事業だ」という。

 しかも、電力契約をいったん切り替えた消費者は、次はなかなか切り替えない傾向がある。公共料金のように捉えている消費者も多く、他のサービスに比べて未払いが少ないのも利点だ。顧客の囲い込み効果が強いため、自社商材と電気を組み合わせて提供するメリットは大きい。法人向けならば、顧客との取引高が一気に大きくなる利点もある。

 新電力事業を手掛けるには、経済産業省に小売電気事業者のライセンス申請をし、認可を得る必要がある。2019年2月26日時点の小売電気事業者の登録数は576社に上る。これほど多くの企業が新電力事業に参入を試みるのは、新電力事業の成長性や効果に魅力を感じる企業が多いことの証左だろう。

 太陽光発電や蓄電池と組み合わせて電気を販売したり、IoT(モノのインターネット化)やブロックチェーンなどを活用した新サービスを提供したりするには、ライセンス取得は欠かせない。だが、自社顧客の囲い込みなどを目的に電力販売を検討しているのであれば、「取次」や「媒介」という方法もある。

 電力販売に伴う売上総額を計上したいのかどうか。どの程度の資金を投じることができるのか。システム対応の柔軟性はどの程度あるのか。顧客との接点をどれくらい強固に持ちたいのかなどによって選択肢は変わってくる。

 新電力ビジネスに精通したビジネスデザイン研究所の久保欣也社長は、3ステップで考えることを勧める。「まず、電力販売の目的を自社でよく議論する。次に売上計上の可否やサービス名称、商流上の役割などについて譲れないものが何なのかを整理する。最終ステップがパートナー候補企業との提携協議だ」。

 新規参入の場合、いずれの方法を選択しても、ほぼすべてのケースで他社との提携が欠かせない。そして、パートナー選びこそが事業の成否の鍵を握る。では、電力の販売方法の選び方と提携協議の際に確認すべき10の鉄則を具体的にみていこう。

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