慶應義塾大学と日立製作所は2016年2月29日、サイバーセキュリティ分野の共同研究を開始したと発表した。制御機器などがインターネットにつながるIoT(Internet of Things)や人工知能(AI)といった技術の普及を見据えて、サイバー攻撃対策の技術開発や実装、運用などに取り組む。2020年をめどにプロジェクトを進める。セキュリティ人材の教育や、技術を実装するための法整備などの提言も実施する。

 会見に臨んだ、慶應義塾大学の村井純 環境情報学部長は「インターネットを前提として様々なサービスが生み出される時代が訪れた。セキュリティ上の脅威も多様になってきている」と話した(写真)。システムやサービスを構成する階層ごとに、セキュリティ対策技術や知識などが必要だという。例えば、サービスで使用されるデバイスのセキュリティや、データ流出を対策するセキュリティ、サービスの妨害に対するセキュリティなどだ。

写真●慶應義塾大学の村井純 環境情報学部長(左)と日立製作所の小島啓二 執行役常務 CTO(最高技術責任者) 兼 研究開発グループ長
写真●慶應義塾大学の村井純 環境情報学部長(左)と日立製作所の小島啓二 執行役常務 CTO(最高技術責任者) 兼 研究開発グループ長
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 加えて、「IoTの普及に合わせて、セキュリティ知識を必要としなかった職業でも、今後は知識を求められる」(村井氏)とする。同氏が例として挙げたのは、自動車などの製造業のエンジニア。IoT普及によって、クルマがインターネットにつながれば、新たなセキュリティの脅威が発生する。「全ての職業にセキュリティが関係するようになる」(村井氏)。

 日立製作所の小島啓二 執行役常務 CTO(最高技術責任者) 兼 研究開発グループ長は「研究開発だけではなく、社会インフラやものづくりなどの現場への実装が必要」と話した。現場での運用を進めたあと、技術やノウハウを体系化して、教育や制度提言などにつなげることの重要性も訴えた。

 慶應義塾大学と日立製作所は共同研究でまず、SOC(セキュリティ・オペレーション・センター)の連携に取り組む、2016年中に学内の2拠点のSOCを連携させ、マルウエアの検出やインシデントに対応する。慶應義塾大学の砂原秀樹 サイバーセキュリティ研究センター長 大学院メディアデザイン研究科教授は「複数の組織が連携することで、より高度なセキュリティ対策を施せる。一つの組織だけでは対策しきれないこともある」と狙いを語った。