コンピュータは、ハードウエアとソフトウエアの両面で急速に進化してきている。ここ25年くらいでコンピュータの演算速度は50万倍になっており、今後10年間でさらに1000倍速くなるという予測もある。このようなハードウエアの進化に合わせて、ソフトウエア技術の進化も著しく、大きく3つの潮流で捉えることができるだろう。

深層学習でAIの進化が加速、行動予測でビジネスを支援

 まず1つめが人工知能、AIの領域だ。例えば、囲碁や将棋のチャンピオン、名人と呼ばれる人たちを人工知能が破ったという話がたびたびニュースになっている。ルールのあるゲームや勝負の世界では、AIが完全に人間を凌駕しつつある。ディープラーニング(深層学習)という手法が加わったことが大きく、例えば囲碁や将棋でいえば、AIが人間の思いもしなかったような手を繰り出してくるということが起きている。

 AI技術の適用は、実社会において様々な分野で急速に広がってきている。シリコンスタジオも先頃、AIを活用した「横綱データ」という新サービスを発表した。これはビッグデータをベースに、ディープラーニングとアンサンブルラーニングという手法を併用して、人の行動予測を行うというものだ。

 例えば、オンラインサービスを運営している企業であれば、ユーザーが離脱しそうな兆候を捉え、離脱するのはいつ頃か、離脱を防げたら将来的にどれくらいの収益が得られるかといったところまで予測することができる。

 ソフトウエア技術の進化に関する2つめの潮流は、コンピュータビジョンである。端的に言うなら、これはカメラに写ったものが何であるかをコンピュータが認識する技術だ。今日では、この分野についてもディープラーニングの適用によって、認識精度が劇的に向上するといった進化が見られる。

 例えば、グーグルでは最近、「GoogleLens」というサービスを発表した。仮に今、目の前に名前の分からない花があったとする。従来は、その花の特徴を言葉で表現して検索するか、写真を撮って画像検索することで名前を突き止めていた。これに対しGoogle Lensでは、カメラをかざすだけでそれが何の花であるかを瞬時に示してくれる。

 さらに3つめの潮流は、コンピュータグラフィックスの領域だ。具体的には、リアルタイムレンダリングという手法による映像生成速度が急激に向上している。例えばゲームなどでは、プレーヤーの操作に反応して、60分の1秒から30分の1秒以内、つまりリアルタイムに映像を生成するといったことも可能になっている。

 こうした技術を使いシリコンスタジオでは、コンピュータグラフィックスのシーン内にある素材に応じて、照明や太陽などの光による反射を繊細に表現できる3Dビジュアライゼーション向けソリューションを提供している。太陽の動きや照明の違いによって室内空間のイメージがどう変わるかを再現できるため、住宅メーカーのバーチャル展示場などで活用されている。

活性化するVR/AR/MRデバイス市場、アイデア次第で広がるビジネスチャンス

 急速な進化を遂げているのは周辺デバイスにおいても同様だ。今日では、ネット上で4Kの解像度による動画を手軽に楽しめるようになり、8Kのディスプレーも開発されている。

 注目されるのが、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、MR(複合現実)を楽しむヘッドマウントディスプレーの出荷台数が伸びていることだ。シリコンスタジオもこの領域において、様々な業務アプリケーションを開発しているが、今後確実に市場が拡大するとみている。2021年には1億台近くのデバイスが普及するという予測もある。

 一方で、VR/AR/MRに関しては、多様なデバイスが市場に登場し、混沌とした状況にある。スマートフォンにつないで簡単に利用できるものから、PCに接続するタイプのものなど、それぞれ性能も違えば、価格にも大きな開きがある。

 MRデバイスの具体例としては、マイクロソフトの「HoloLens」が挙げられる。これは非常に完成度の高いデバイスで、コンピュータを内蔵しており、頭にかぶるだけで利用できる。深度センサーの搭載によって部屋の形や奥行きも認識でき、高度なアプリケーションの実現が期待できる。

 さらにアップルも、次期OSの「iOS 11」でAR対応の開発キットをリリースすることを発表。これによって、膨大な台数が市場に普及しているiPhoneがARデバイスとして使えるようになり、ARの普及が一気に進むことも考えられる。そこに、企業にとって大きなビジネスチャンスがあるのは言うまでもない。

 シリコンスタジオはこれまで、主にエンターテインメントの世界において様々な技術を開発してきた。我々の強みであるリアルな映像表現にかかわる活用技術を、今後は広範な産業分野の企業に提案していきたいと考えている。