ランクアップは、「効果が実感できる製品・サービスによって、女性の悩みを解決し、輝く女性を増やします」を理念に据える化粧品会社だ。累計販売本数750万本の「マナラホットクレンジングゲル」をはじめとするヒット商品の数々により、2005年6月の会社設立以来、売り上げは常に右肩上がりを続けてきた。現在、社員数は51人で、今期はおよそ100億円の売り上げを見込んでいる。

 一方、当社は残業をなくす取り組みによって、従業員が仕事と生活を両立し、いきいきと働き続けられる職場環境の整備にも注力しており、これが評価されて、東京都が実施する「東京ライフ・ワーク・バランス認定企業」に選ばれた。こうした当社の生産性の高さに注目が集まり、テレビや雑誌で数多く取り上げていただいている。

女性が一生活躍できる社会の実現に寄与する会社を目指して起業

 もともと私自身、当社の起業前は、広告代理店の取締役 営業本部長として、深夜まで働くという日々を送っていた。多くの女性社員の部下にも同様の長時間労働を求めることになり、会社の売り上げは伸びていくものの、退職者が相次ぐという状況だった。

 その背景には、日々終電で帰る業務の厳しさもあったが、女性社員の多くは将来結婚し、出産したい希望を持っていて、そのときに現在の会社には居場所がなくなってしまうというという危惧があったからだ。女性である自分の身に照らしても、そうした思いは理解できたので、残業をなくすための提案を次々と社長に上申したが、短期的な視点で実現させることは困難だった。

 そこで私は、女性が一生活躍できる社会の実現に寄与する会社を、自分自身の手で作ろうと考えたわけだ。それが今のランクアップであり、スタート当初から、残業なしに売り上げを伸ばせる企業を目指した。

 そのため経営上の強みにしたのが、価格競争に巻き込まれない「差別化した製品づくり」、最大の効果を目指した「わかりやすい広告」、そしてお客様の声を吸い上げる仕組みによる「親切で丁寧なサービス」の3つである。

 いずれも、どこの企業でも取り組んでいるような内容だが、手を抜くことなく実践していくことは意外に難しく、ただ真摯にチャレンジしていくことで、お客様との信頼関係を築き、リピーターを増やせたのだと考えている。

全社員の定時退社を徹底、それを支える各種施策を展開

 一方、残業をなくすための具体的な施策としては、社員全員への定時退社の徹底を図った。当初、ランクアップは9時から18時までを定時としており、30分から1時間くらい残業をして帰れるくらいの勤務体制を敷いていた。

 しかし、私自身が出産、育児を経験する中で、それでも子供を持つ女性には負担が大きいのだと思い当たった。そこで、すべての社員に定時退社を実践してもらうことを決断した。

 これには社内で反対もあった。「日々の業務をどうやって定時だけでこなしていくのか」というのだ。これに対して実施したのが業務の棚卸しである。要するに、各人がどういう作業にどれだけの時間を費やしているかを洗い出し、検証したわけだ。

 試行錯誤を繰り返しながら、会議の回数を半分に減らし、会議資料の作り込みをやめるなど、本当に必要な業務の選別を行っていった。さらにルーティンワークのITシステム化、アウトソーシングサービスの活用なども積極的に推進。社内業務のスリム化、効率化を図り、全社員が定時退社しても、無理なく日々の業務をこなしていける環境を実現してきた。

 その後、東日本大震災後の電力不足を機に、今では定時退社時間前の17時に帰宅する勤務形態が定着することとなった。

業務のスピードアップに向け、社内ルールや福利厚生を整備

 そのほかにもランクアップでは、業務スピードを上げるルールを作った。例えば、会議は30分で終わらせる、社員同士のメールで挨拶などを入れず用件から書き始めるなどだ。効果があったのが、誰もが社内の相手のスケジュールを早い者勝ちで決められるというルールである。調整や承認にムダな時間を使わないようにしているわけだ。

 冒頭で社員数が51人だと申し上げたが、そのうちワーキングマザーが29人もいる。彼女たちには子供がいて総勢36人になる。当社ではそうした社員と家族を支えるため、福利厚生の制度整備にも努めている。例えば幼児の急な発熱などの時、1日2万5000円のベビーシッターサービスを会社の補助で、社員が300円の負担のみで利用できる制度も導入した。

 以上のような施策を通じてランクアップでは、女性が結婚、出産、育児といったライフイベントを経ながら、一生活躍していける職場環境を追求し、社会への貢献を果たしていきたいと考えている。