倉敷青果荷受組合は、白壁の街 岡山県倉敷美観地区から南へ約2キロ、倉敷地方卸売市場内で青果物の卸売事業を展開する(写真1)。1946年(昭和21年)の創業以来、全国の産地から入荷する青果物を岡山県内の小売業者に卸してきたが、近年の流通環境の変化は同組合の事業にも大きな影響をもたらした。

写真1●倉敷青果荷受組合の社屋
写真1●倉敷青果荷受組合の社屋
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 全国の卸売業者の事業が従来のスタイルでは縮小を免れ得ない状況であることは周知の通りである。それに対して倉敷青果荷受組合は、「新規開拓」を企業理念の一つに掲げて新たなビジネスモデルへ転換。同業者の売り上げがピークである1991年対比で40%ダウンするなか、同組合の売り上げは2014年に1991年対比で2倍の伸びを見せる。

写真2●倉敷青果荷受組合 理事長の冨本尚作氏
写真2●倉敷青果荷受組合 理事長の冨本尚作氏
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 そのビジネスモデルの転換に向けた業務改革のけん引役を務めてきたのが、倉敷青果荷受組合 理事長の冨本尚作氏である(写真2)。同氏は1998年に、業務用洗浄済みカット野菜およびホール野菜の直販事業を開始。同組合を、食材としての青果物に関する顧客の課題解決業へ転換させた。今では直販事業は、全売り上げの30%を占める、戦略的事業分野に育っている。

卸売りから直販へ事業をシフト

 業務用の洗浄済みカット野菜およびホール野菜の直販事業を本格展開する際には、業務プロセスの見直しが大きな課題となった。従来の卸売り事業の場合は、生産地からの商品一括受け入れ、小売店への配送といったように業務プロセスがシンプルだ。それに対して直販事業の場合は、受注、ピッキング、製造、出荷という工程が加わる。しかも、生鮮食品であるため対応には即日性が求められる。

 「キュウリ1本、トマト1個でも注文を承ります」という姿勢を貫くには、新たな業務のバックボーンとなる仕組みが必要である。野菜の洗浄やカット、パッキングのための設備はもとより、従業員の教育やノウハウの蓄積が必要となった。

 直販事業開始から10年間は現場の工夫で乗り切ってきたが、堅調に売り上げを増やすうちに、当初想定した業務プロセスではさらなる事業拡大が困難であると感じるようになる。そこで冨本理事長は、ITの導入による業務改革に着手した。

 倉敷青果荷受組合は、オフコン全盛の時代に販売管理/会計管理といった業務システムを導入しており、業務の生産性向上および正確性の確保に、IT化が不可欠であることを実感していた。直販事業においても業務品質と効率を高めるには、顧客との接点からITを活用すべきであり、受注から出荷に至るまで情報が一貫して流れる仕組みを構築することが重要であると考えた。