ここに来てスマートフォンが俄然注目を集めている。

 NTTドコモが4月にAndroid搭載のスマートフォン「Xperia SO-01B」を発売したのに続き、KDDIもAndroid搭載のスマートブック「IS01」を発表。米アップルの「iPad」も5月下旬に日本で発売予定だ。数年前とは比べものにならないほど続々と製品が登場しつつある。

 そんなスマートフォンの中でも出荷台数と人気の両面で群を抜いているのが「iPhone」だ。現在、国内で年間200万台規模のスマートフォン市場の半数をiPhoneが占めているといわれる。発売から2年弱が経った今、いよいよ一般の人にも浸透し始めたと感じている。

 2年前はガジェット好きな人が持つに過ぎなかったが、今ではITに詳しくない筆者の親戚もiPhoneを持ち始めている。電車の中でも、辺りを見回すとiPhoneをいじっている人が結構多い。

 2009年の国内携帯電話の出荷台数は3000万台強だが、単一機種としてのiPhoneの存在感は日に日に増している。ソフトバンクモバイルはiPhoneの販売台数を公表していないが、発売から2年間の累計で200万~300万台に達しているとみられる。iPhoneはすでにキャズム(製品の初期市場と普及期の間に存在する深い溝)を越えたのではないかと感じている。

本格化するスマートフォンのビジネス利用

 筆者の次の興味は、iPhoneをはじめとするスマートフォンが、コンシューマー向けだけではなく、企業向けとしてもキャズムを越えるのか、という点だ。結論から言うと、その可能性が見えつつあるのではないかと感じている。

 まず2009年後半あたりから、iPhoneのビジネス向け市場が本格化の兆しを見せている点が挙げられる。例えばファーストリテイリングや横浜商科大学、アイエフエスネットといった企業が、1000台以上のiPhoneを導入することを発表した。

 企業に特化したiPhoneのビジネスソリューションを提供するジェナの手塚康夫社長は、「2009年6月のiPhone OS 3.0のリリースからセキュリティが向上し、企業向けに使えるのではないかという問い合わせが増えた。今年に入ってからは、単なる情報収集の問い合わせだけではなく、システム導入に向けた問い合わせが多くなっている」と語る。iPhoneの優れたユーザーインタフェースやパソコン並みの操作性が企業内個人を通して広まり、本格的に企業ユーザーの選択肢になりつつあるようだ。

 iPhoneやiPod touchを企業のプロモーションツールとして利用する例も増えている。ネスレ日本や東急ハンズ、日産自動車などが、自社の製品のプロモーション用としてiPhoneアプリを配布している。これらはAR(拡張現実)を活用したり、インタラクティブな要素を取り入れたりするなど、ユーザーに新たな体験をもたらすような工夫が施されている。企業がこのような取り組みを進める理由は、iPhoneがコンシューマー向けに一定の規模を持つほど広がったほか、高度なシカケを持ったアプリケーションを企業自らがApp Storeを経由して配布できる仕組みを持つ点が大きいだろう。

スマートフォンと携帯電話端末の境目は無くなる

 そもそも将来的には、iPhoneのようなスマートフォンが、特殊な端末ではなくメインストリームの端末になるとみられる。例えばNTTドコモの山田隆持社長は、会見などで「いずれスマートフォンと従来型の携帯電話端末の境目は無くなる」と発言している。既に携帯電話各社は、端末プラットフォームとしてAndroidのようなオープン型プラットフォームの採用を加速している。このようなプラットフォーム上で、従来の携帯電話端末が持つ機能を継承しようとしているのだ。iPhoneは、こうした将来を先取りした端末とも言える。今の段階から将来に備えておく必要もあるだろう。

 米国で発売を開始した米アップルの「iPad」も、いよいよ5月末から日本でも発売される。iPadは大画面になったことで、ビューワーとしての機能がより強化されている。あるコンサルタントは「iPadのような端末を使うことで顧客への提案スタイルが変わる。ノートPCやプロジェクターを使った提案よりも、より顧客の近くで、表現力のある説明がしやすくなる」と期待を語る。iPhoneとはまた違った、ビジネスへの展開が考えられる。

 上記のような動きを踏まえつつ、日経コミュニケーションでは5月にiPhone/iPadのビジネス活用に特化したセミナーを企画した(詳しくはこちら)。iPhone/iPadのビジネス活用についてのソリューションを提供する、ジェナやインフォテリア、大塚商会といった企業の担当者を講師に招くほか、実際にビジネスでiPhoneを活用しているAIGエジソン生命保険、横浜商科大学、東急ハンズといったユーザー企業を招いたパネルセッションを開催する。

 iPhoneのようなスマートフォンを企業の業務端末として使う場合、これまでの携帯電話と異なり、管理運営方法にも多くのノウハウが求められる。例えばiPhoneはアプリケーションを自在にインストールできるほか、音楽機能など業務と関係のない機能も多い。App Storeのアカウントをどのように運用するのかという点を一つとっても、ノウハウが求められる。セミナーでは、このような企業ユーザーの疑問に答えるプログラムを豊富に用意する予定だ。

 さらにはスマートフォンと親和性が高く、企業にとって無視できない存在になっているソーシャルメディアについても、その取り組み方に関するプログラムを用意する予定だ。ぜひ参考にしていただきたい。