Eコマース関連民間企業などの団体「GBDe(Global Business Dialogue on Electronic Commerce)」は2008年10月31日(米国時間)、第10回の総会を米国サンフランシスコで開催した。日本をはじめアジア太平洋地域のIT・通信企業、政府機関、国際団体などが参加した(写真1)。日本からはNTTデータやNEC、日立製作所、野村総合研究所などが参加。NTTデータの榎本隆 副社長が全体の議長を務めた(写真2)。

写真1●GBDe総会の模様
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写真2●議長を務めたNTTデータの榎本隆 副社長
写真2●議長を務めたNTTデータの榎本隆 副社長
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 GBDeはEコマースをはじめとしたインターネット経済の普及・促進や政策提言を行う民間企業団体。設立は1999年で、現在は19の企業、政府機関、国際団体からなる。

持続可能なEコマースとビジネス社会目指す

 第10回となる今回の総会では、「持続可能なEコマースとビジネス社会」というメインテーマの下、以下のサブテーマを設けて議論した。(1)デジタルホーム、(2)国際少額決済、(3)消費者信頼の確立、(4)サイバーセキュリティ、(5)ユビキタスネットワーク社会、(6)デジタル機会と格差、である。「企業の社会的責任を果たすテーマ。同時に、これらの問題を解決することが、引いては我々にとってのビジネスチャンスにもなる」(NTTデータの榎本副社長)。

写真3●APECのファンカルロス・カプニャイ大使
写真3●APECのファンカルロス・カプニャイ大使
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 アジア太平洋経済会議(APEC)代表として講演したファンカルロス・カプニャイ大使は、「世界にはEコマース経済に参加できていない人々が依然として多い」として、問題解決への取り組みを訴えた(写真3)。「アジア太平洋地域の企業は90%が中小企業。しかし彼らはEコマースに十分参加できていない。IT環境の整備、教育水準の向上など、未解決の問題が多いためだ。GBDeがこうした問題解決のきっかけとなることを期待する」(同)。

写真4●経産省の鍜治克彦課長
写真4●経産省の鍜治克彦課長
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 日本の経済産業省からは鍜治克彦 商務情報政策局情報政策課長が参加(写真4)。「経済的需要創出と問題解決基盤としてのIT」題して、日本における関連プロジェクトを紹介した。

 一例として挙げたのが地方の中小企業や商工会議所、農家と大都市の消費者をつなぐEコマース環境整備を進める「Eマーケットプロジェクト」である。「日本では特に農業やサービス業の効率性向上が課題になっている。検索やデータマイニングといったITを活用して、効果的な需要創出とサービスの品質や効率向上の基盤を作る。GBDeと効果的な連携を図りたい」(鍜治課長)。

写真5●NECの川村敏郎 特別顧問
写真5●NECの川村敏郎 特別顧問
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 NECから参加した川村敏郎特別顧問は、消費者が信頼できるEコマースの実現に向けた提言を行った(写真5)。2007年のGBDe総会で提案した、Eコマースにおける消費者保護や仲裁を担う国際的な連携機構「ICA-Net」を、2009年に日本、マレーシア、シンガポール、米国、台湾で試行することを発表した。「消費者と販売者との信頼確立はEコマース発展に不可欠。ICA-Netは各国の消費者アドバイザリ機関が苦情処理を受け付け、他地域の業界団体につないだり、必要に応じて捜査当局に連絡を取り解決を図る」(川村特別顧問)。

 来年のGBDe総会はドイツで開催される。NTTデータの榎本副社長は「今後は欧米の情報通信企業にも参加を呼びかけ、よりグローバルな組織にしていきたい」と語る。