写真1●Weblioのすべてを構成しているシステム。ウェブリオ社内に設置されている
写真1●Weblioのすべてを構成しているシステム。ウェブリオ社内に設置されている
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写真2●左から,社外取締役の紀信邦氏,代表取締役の辻村直也氏,取締役最高技術責任者の佐々木亨氏
写真2●左から,社外取締役の紀信邦氏,代表取締役の辻村直也氏,取締役最高技術責任者の佐々木亨氏
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 Weblioという人気サイトがある。調べたい用語の意味を,200以上の辞書から一度に検索できるサイトだ(参考記事参考リンク)。2007年2月の実績は,900万ページ・ビュー,120万ユニークIPアドレスを誇る。驚くべきことに,このサイトのすべてのシステムは,ウェブリオ(Weblioを提供している会社)社内に設置された40~50台の中古パソコンでできている(写真1)。

 このシステムをほぼ1人で作り上げたのが,ウェブリオ取締役最高技術責任者の佐々木亨氏(写真2右)である。ウェブリオに投資し,同社の社外取締役も務める紀信邦氏(写真2左)は「佐々木氏がいなかったら投資しなかった。彼がいなかったら,同じ事業をするのに10倍のコストがかかる」と語る。佐々木氏は,ハードウエア,ソフトウエア,ネットワークのそれぞれについて豊富な知識を持つ。「特にネットワークに強いのが大きい」と紀氏は評価する。

 ウェブリオの設立は2005年8月。同社代表取締役の辻村直也氏(写真2中央)が中心になって設立した。ただ,設立時にはまだ「インターネット関連でサービスを提供する」ということしか決まっていなかったという。最初はとりあえず,IT用語事典を設立メンバーで執筆していた。その延長線上で,米Answers.comが提供している辞書サービスにヒントを得て「辞書をつないでいったらどうだろうか」というアイディアが出た。「トヨタ自動車とは何かを調べようとしても,検索サイトで最初に出てくるのはトヨタ自動車の会社のWebサイトだったり,リンゴを調べようとしても,リンゴの販売サイトが出てきたりする」(辻村氏)。この不便を解消するサイトである。設立から2週間後,2005年9月に現在のサービスの内容が決まった。

 最初のシステムは,佐々木氏が1人でPHPを使って書いた。PHPを採用したのは,なるべく短期間で開発したかったからだ。だが,PHPだとオンメモリーの処理がやりにくく,速度が出なかった。チューニングしても速度が上がらない。そこで2005年9月末に会社として大きな決断を下した。約1カ月かけたPHPのシステムを捨て,全面的にJavaで書き直すことにしたのである。「Javaのほうが工数はかかるが,検索の表示速度を優先した」(辻村氏)。Javaのシステムも佐々木氏がほぼ1人で作り上げた。こうして,2006年1月,12種類の辞書でサービスの提供を開始した。

 Weblioを構成する40~50台のサーバーすべて自社内にあり,増設や保守もすべて自社で行っている。中古のデスクトップ・パソコンを買ってきて,メモリー増設やRAID搭載などを行ってサーバーとして使用しているのだ。システムは,WeblioのWebサイトを提供するサーバーに加え,コンテンツの内容をキャッシュしておくためのデータベース・サーバー,広告用のスクリーンショットの生成サーバー,ログ・サーバー,負荷分散のためのサーバーなどからなる。

 OSにはLinux(Fedora Core)を採用。WebサーバーはApache,WebコンテナはTomcat,データベース管理ソフトはPostgreSQLと,すべてオープンソース・ソフトウエアで固めている。システムは前述したようにJavaで書いている。キーワードの正規化やXMLの加工などにオープンソースのライブラリを使っているが,Strutsなどのフレームワークは使っていないという。

 実は,Weblioのシステムは最初から社内にあったわけでない。2006年8月頃までは外部のホスティング・サービスを利用していた。自社内のシステムに切り替えた一番の理由はコストだ。ホスティングだとサーバーを1台追加するのに20万円程度かかる。一方,自社内のシステムだと中古パソコンを使えば1台10万円以下で済む。しかも,Weblioのようサービスだと,サーバーに大容量のメモリーが必要になる。「ホスティングだと4GBのメモリーだけで何十万円もかかってしまう」(佐々木氏)。

今後は外国語やケータイ向けも視野に

 Weblioで現在,利用できる辞書の数は200以上ある。辻村氏は「最初は『100もないだろう』と思って100を目指していた。しかし,やっているうちに100でも全然足りないことがわかって,次の目標を200にした」。と語る。それでも実際には「全然足りない」(辻村氏)。世の中には,多くの辞書があるのである。

 現在,力を入れているのが,自動車,オートバイ,電車といった乗り物のコンテンツの充実だ。各メーカーに情報の提供を働きかけている。方言にも力を入れている。現在,対応している方言は10種類台だが,「ゆくゆくは日本全国の方言を入れたい」と辻村氏は語る。

 ユーザーからは外国語の辞書の要望も強いという。英語(英和辞典/和英辞典など)はもちろん,ドイツ語や中国語の要望も寄せられている。製造業やバイオといった分野の専門用語は「検索されている割にヒットしない用語が多い」ので,こうした分野も充実させたいという。現在はまだ行っていない“携帯電話向けサービス”をどのように実現するかも課題だ。携帯電話ではどのようなサービスが使いやすいかを現在,検討中だという。