写真1 携帯電話で実行したメールのAjaxアプリケーション(パソコン上のエミュレータで実行したところ)
写真1 携帯電話で実行したメールのAjaxアプリケーション(パソコン上のエミュレータで実行したところ)
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 日本オープンウェーブシステムズは2006年春,Webアプリケーションを配信する「RIAサーバー」と携帯電話向けのAjax(Asynchronous JavaScript+XML)実行環境「MIDAS」を発売する。両者の組み合わせで,サービス・プロバイダや通信事業者がAjaxで開発したWebアプリケーションを,ユーザーのパソコンや携帯電話に配信できるという。南秀治アカウントエグゼクティブと関根章弘ビジネスソリューションエバンジェリストに,携帯電話向けのAjaxアプリケーションで実現できるサービス像を聞いた。

--RIAサーバーとMIDASを組み合わせると,どんなことができるのか。

 Ajaxを使うWebアプリケーションを,RIAサーバーから携帯電話に配信することが可能だ。携帯電話のアプリケーションは多くの場合,ROMに焼き込まれて出荷されている。Javaなどのアプリケーションを実行できる端末もあるが,インストール操作が必要。これに対してWebアプリケーションは,Webにアクセスするだけで使える。

--携帯向けAjaxアプリケーションは,どういう場面で有益か。

 我々は,日本では携帯電話でメールを使う人の割合が高いことに注目している。総務省が公表したデータによると,携帯電話利用者の87.7%が携帯メールを利用しており,これは他国よりかなり高い。こうした状況を考えると,携帯電話のメール・ソフトの画面を広告や告知に使わない手はない。

 MIDASは,Ajaxのアプリケーションを端末内に蓄積して実行できる。ローカルに蓄積したデータにアクセス可能なため,オフライン環境でも使えるメール・アプリケーションが実現する(写真1)。このメール・アプリケーションの背景に,広告や告知の画像を表示するわけだ。もちろん,それは簡単に入れ替えられる。SMS(short message service)メールの受信をトリガーにして,Webアプリケーションを自動的に書き換えるような処理も実行可能だ。ユーザーが意識することなく,アプリケーションを更新できる。

--今後サービス・プロバイダや通信事業者は,どういうサービスをユーザーに提供していく必要があると思うか。

 新規参入や異業種参入が相次ぐこの業界でより良いポジションを築くには,まずユーザーが作成した情報をサービス・プロバイダ側に集約して,蓄積できるようにする必要がある。そこには「場所に依存せず情報を使ってもらいたい」,「ユーザーの囲い込み」,「トラフィックを増やす」,「端末を落としても対応できるセキュリティ対策になる」など,さまざまな理由がある。ブログのサービスなどはその一例で,ユーザーが書き込んだ情報をサービス・プロバイダ側に預けたことになる。

 利便性を考えれば,ユーザーが作ったデータやメールをモバイル端末とパソコンで分ける必要はない。マスターデータとして預けてもらって,マルチデバイスで利用できるサービスも必要だ。従来の紙芝居的に画面が遷移するWebも,利便性が高いとは言えない。アプリケーションをブラウジングするような操作性で使えることが必要だろう。多様な情報を個人のニーズに沿って集約,カスタマイズして提供するポータルも有効だと思う。

(山崎 洋一=日経コミュニケーション