「iPad:識者はこう見る」シリーズの第7回は,電子部品分野のアナリストである野村證券の秋月学氏に話を聞いた。(聞き手は根津 禎=日経エレクトロニクス)

 Apple社については,3年前から特に注目している。iPhoneやiPadなどを見る限り,同社は長期的なシナリオと,ある「世界観」を持って製品開発に取り組んでいるように思う。つまり,しっかりとした目的意識を持ってものづくりをしている。世界市場で戦うのならば,こうした世界観が重要になるだろう。例えば,通信帯域が広がることで何ができるようになるのか,そしてハードウエアとしていったい何かできるのか,といったビジョンがしっかりしている。こうした世界観をしっかりと持った機器メーカーは,今,世界でもApple社しかないように思う。

 新しいサービスやコンテンツの提供が,ハードウエアの高機能化のきっかけとなる。そして,ハードウエアの機能が向上することで,コンテンツも進化していく。ハードウエアを進化させることで,Apple社はコンテンツをうまく引き寄せている。例えば,iPadであれば,電子書籍と動画のアプリケーションを引き込むのに適したデバイスだ。

 今やiPadやiPhoneは,「技術ドライバ」と言える存在となっており,部品メーカーにとっては新しいものを作る土壌となっている。iPadのハードウエアを見て,よく「日本製部品の採用が少ない」との指摘がある。だが,コンデンサやコネクタなどは日本メーカーの製品が使われている。

 Apples社は「iTunes Store」によって,コンテンツ流通の「胴元」にもなっている。OSの開発まで自社で手掛けており,ハードウエアとともにソフトウエアの改善も進めていける上,コンテンツ配信まで手掛けているので本当に儲かるシステムになっている。こうした胴元のビジネスで先行するApple社にほかの機器メーカーが対抗していくのは容易ではない。Apple社のようにある世界観を提示したい企業は,こうした胴元の役割まで果たさなくてはならないだろう。

 iPadの「ファースト・モデル」は少なくとも400万~500万台ほどは売れるだろう。ファースト・モデルは,あくまで世界観を提示するためのもの。本当に重要なのは,今後登場する「セカンド・モデル」や「サード・モデル」である。あくまで想像の範囲だが,もっと小型・軽量化したり,画面に有機ELパネルを搭載しているかもしれない。