今回からアジャイル開発にまつわる動向をお届けする。迅速な開発が可能で、しかも開発者のやる気を引き出せると再注目されているからだ。今回はアジャイル開発手法の一つであるスクラムのコミュニティ「すくすくスクラム」が開催した勉強会をレポートする。三つのワークショップで“育つチーム”の作り方を学んだ。
2009年11月25日夜7時、金融情報サービス会社QUICKの会議室で、「チームとは何だ」と題してすくすくスクラムの第7回勉強会が始まった(写真1)。約40人の参加者はほとんどが技術者で、システムの受注者側と発注者側が半々程度だという。また毎回約半数が初参加である。
スクラムとはアジャイル開発手法の一つで、プロジェクトでの採用が増えている。理由はシンプルであること。「30日ごとの繰り返し開発」「毎朝15分のミーティング」「繰り返し開発が終わったら必ず3時間の振り返りを実施する」といった、繰り返し開発と振り返りの二つの枠組みのみを決める。技術的な技法にまでは踏み込まない。
今回、勉強会はなぜチームをテーマにしたのか。「スクラムは個人よりもチームが活動の主体になる、いわばチーム駆動開発だ。にもかかわらず、スクラムの教科書では『5~9人が同じ作業場所に集まり、スケジュールと作業のやり方を自分たちで決める』程度しか定義していない。どんなチームが適しているかを学ぶ必要がある」。講師を務めた、スクラムの導入コンサルなどを手がけるOdd-e Japanのエマーソン・ミルズ代表は理由をこう話す。
ミルズ代表は冒頭、スクラムで求められるチームの理念は家族企業の理念に通じると説明した。「家族企業はお金のためではなく、父親(創業者)の強いコンセプトを“良いもの”と心の底から信じて、それを共通の目標として仕事を進める。これがあれば最初は技術が足りなくても経験が浅くても、改善を続けて成長できるチームになる」。
半面、「こうした目標を持つことは一般企業では難しい」とも言う。ではどのようにチームを作ればよいのか。勉強会は三つのワークショップを通して、そのヒントを探っていった。