2009年10月,中国の携帯シェア第2位の中国聯通(チャイナ・ユニコム)は正式に米アップルの「iPhone」を発売した。ただし料金プランを見てみると,富裕層にとっても初期費用は決して安くない。また,中国には非正規品のiPhoneやiPhoneもどきのスマートフォンが数多く存在する。中国聯通がどれぐらい販売台数を伸ばせるかは未知数だ。

(日経コミュニケーション編集部)


町田 和久/情報通信総合研究所 主任研究員

 中国聯通は10月30日のiPhone発売に先駆けて10月1日からインターネット上で予約を開始し,10日間で約1000台の予約があったと伝えられている。予約を始めた10月初旬には,建国60周年を迎えた2009年の国慶節の一斉休暇があり,人々の関心が分散していたことを考えると,関係者の間では「かなりiPhone人気は高い」と評価されていた。12月末にはiPhoneユーザーが30万に達したとの報道もある。ただし,この数字を大きいとみるかどうかは意見の分かれるところである。

政府の思惑から無線LANは非搭載

 販売機種は,「iPhone 3GS」の16Gバイト機など3機種だ(写真1)。ラインアップは日本などと同じだが,最大の違いは無線LAN機能が搭載されていないこと。これは,中国独自無線LANセキュリティ標準のWAPI(wireless LAN authentication and privacy infrastructure)を標準にしたい中国政府の思惑があったと言われている。

写真1●中国聯通は「iPhone 3GS」2機種と「iPhone 3G」1機種を発売<br>出典:中国聯通のWebページより
写真1●中国聯通は「iPhone 3GS」2機種と「iPhone 3G」1機種を発売
出典:中国聯通のWebページより
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 第3世代携帯電話(3G)方式におけるTD-SCDMA方式と同様,中国政府が強力に推し進める自主開発方式の採用重視がその背景にある。ただし中国聯通にとっては,iPhoneもどきのヤミ携帯(山寨機)が大量に出回っている問題とともに,無線LAN非搭載がiPhone販売の足かせになりかねない。

8万~10万円に上る初期費用

 中国聯通のiPhoneの料金プランを詳しく見てみよう。初期費用は,端末価格と24カ月の月割りで返還されるデポジットの合計となる。具体的には,3G 8Gバイト機が5999元(1元=13円で約7万8000円),3GS 16Gバイト機が6999元(同約9万1000円),同32Gバイト機が7999元(同約10万4000円)である(表1,一部プランを抜粋)。

表1●中国聯通のiPhone向け料金プラン(一部のみを抜粋)
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表1●中国聯通のiPhone向け料金プラン(一部のみを抜粋)

 ただし,月額プランの料金額によって端末価格とデポジットの比率が変わる。例えば,最低額の月額126元(同約1600円)のプランだと3G 8Gバイト機の端末価格は3099元(同約4万円)。一方,最高額の月額886元(同約1万2000円)のプランだと各機種とも端末自体は無料となる。いずれにしても初期費用としては日本円で8万~10万円が必要で,富裕層が買うとしても決して安い金額とは言えない。

 料金面の特徴としては,音声利用とデータ利用でそれぞれ上限を設定していることが挙げられる。中国における携帯電話での音声利用の多さを踏まえ,上限時間はかなり長めに設定されている。また,データ利用量が月間6Gバイトを超えた場合には,システム側から自動的に同機能を停止することが料金表の脚注に記されている。